[幻]

この話は自己責任で読んでください。
廃墟みたいな専門学校が職場なんですが、残業で一人残っていて、
もう電車もなかったのでその日はそこで寝ることにしたんです。
冬の最中で寒い時期だったので、隙間風の多い職場で寝るのは苦痛でした。
なので、エレベーターの中で寝ようと思ったんです。
私は小柄だったのでさほど窮屈な思いもせずに、密室の中で寝ることができました。
その夜に突如金縛りに遭いました。
体が動かせず、頭もはっきりしているのですが、夢の延長のような幻を見ていました。
やたらリアルで、その幻は、去年の夏に友人たちとキャンプに行ったときのものでした。
そこで友人と周囲の山を車で散策していると、古びたトンネルを見つけたのですが、
その様子も克明に映し出されていました。
トンネルの前にボロボロになった鎖と立て札があり、入るべからず、と書いてありました。
友人は悪ノリして、「今夜はここで肝試しをしよう」と言い、私も賛成しました。
その夜、皆でトンネルの前に集まり、さあ肝試しをしようというところで、
ある霊感持ちの友人が、「ここはヤバいよ。帰ろうよ。」と言い出しました。
別の友人も、「そういえばこの辺りに神隠しのトンネルがあるって聞いたことがある」と言い出しました。
かくいう私も、オカルト道の師匠と仰ぐ人から、「お前の行くキャンプ地の近くにはヤバいスポットがある」と聞かされていました。
悪ノリした一人の友人が、「そんなことあるわけないじゃん」と行って、ズンズンとトンネルに入っていきました。
その友人はなかなか帰ってきません。意を決して私もトンネルに足を踏み入れました。
そこで目が覚めました。しかし、まだ身体は金縛りにあったままです。
仕方がないので耳を済ませていると、足音が聞こえます。
学校に忘れ物した生徒が取りに来たのかな?とも思いましたが、時間的にありません。
と、いきなりエレベーターが動き出し、扉がスライドして開きました。
そこには呆然とした顔の友人がいました。
トンネルに入って真っ暗になったと思ったらエレベーターの前にいたそうです。
何故このような時間のズレがあったのか分かりません。
ただ、あのトンネルは中で空間がねじれた危険な場所だったのでしょう。
二度と行かないようにしたいと思います。


次の話

Part190menu
top