[貨物列車]
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(夢うつつとはいえ、)その人もさすがに「会社にいかなくちゃ」と
どこかでおもったのでしょう。車掌に聞きに行きました。
 「あのーM駅には、いつ着くの?」
車掌はこう答えました、
 「お客さん、切符みせてください」
(彼は定期券だったのですが)なぜか切符を探してしまいました、
しかしいくら切符を探してもみつかりません。すると、車掌が
激怒しました。
 「お客さん!!切符無しに乗り込まれちゃこまるんだよ!
  この電車は貸切りなんだから!早く降りてくれよ!!降りろ!」
彼は車掌に襟首を捕まれ、車内をひきずられます。
車掌は走行中のドアをガラガラっとあけると、その人を車外に
放り出しました。彼は列車からほおり出されると、丁度そこは
川をまたぐ鉄橋で真っ暗の中を落下して行きました。
・・・・・・・「おや?ここは」
それが第一声だったそうです。気が付いたときその人は、
ある市立病院の病棟で鼻や気管に何本も管を差し込まれた状態
で、時刻はもう夜の9時頃だったそうです。

その人が乗った列車は、駅の停車場に激突して多数の死傷者を
出した列車だったのです。彼は朝から意識不明で、危篤状態
からようやっと生還したのです。

いまから10年ほどまえ、関東近郊のある鉄道で実際にあった
事故からの生還者の貴重な話でした

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