[死体洗い]

歳がばれてしまうが、俺が大学2年のときだから、もう15年も前の話。

学校は埼玉だったんだが、その日は授業さぼって一人で新宿をふらふらしていた。
とくに行くあてはなかったんだけどね。
歩くにも疲れたんで、歩道の端にあるガードレールに腰掛けていたとき、男が声を
かけてきた。「暇ですか?」ってね。
もちろん怪しいと思ったよ。で、とっさに「友達待ってるところだ」と言ったんだよ。
そしたら、その男は「ちょっとバイトやってくれないか?」と言ってきた。
はぁ?って感じだよね。そんなの絶対怪しいのは分かってたけど、気が弱い俺は
即断るのをためらって、「何のバイトですか?」と聞いてしまった。
「大きな声じゃいえないんだけど・・・」と男は前置きした後、ゆっくり顔を近づけて
「死体洗いって知ってるよね?」と聞いてきた。
はい、知っていますとも。だけど本当にあるわけ無いじゃない。誰だってそう思うよね。
でも気が弱い俺は「はぁ」と相槌を打ってしまったんだ。
「そのバイト、やってくれないかな?」
やばいのに捕まったな。心底俺はそう思ったよ。
「でも、友達待ってるんで」
「いや、今すぐじゃないんだよ。今週の土曜日だから」と言って、一枚の名刺を
差し出した。「でね、バイト料は2万円でるから。2〜3時間で終わるからいい
報酬でしょ。じゃ、来れるかどうか今日中に連絡くださいね」
名刺の裏には地図が書いてあった。
続く