[404号室]
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「おい、君。話がまとまったぞ。」
所長に声をかけられた。
「このお客様に404号室をお貸しする。」
バカかこの所長は?この夏の暑さで気でも狂ったのか。
「でも所長。ないものをどうやって。」
「いつものとおりだ。書類を作って手続きをとる。お互いに404号室については納得済みである。
 なんの問題もない!!」
大ありですよ。
「オーナーにはなんと言うのです。」
「さっき、確認をとった。家賃さえ払ってくれるなら細かいことは気にしないそうだ。」
めちゃくちゃだ。
「役所にはなんと。」
「無い部屋なんだから、報告する必要はない。黙っていればいい。」
それでも所長か。
「問題は全て片付いたようだな・・・・では書類を作ってくれ。金はここにある。」
黒尽くめの男が陰気な声で言って、手元のかばんを開けると札束を取り出した。
「はい。直ちに作りますので、少々お待ちくださいーー。ほら君早くして!!」
ご機嫌なった所長に言われて私はしぶしぶこのバカな話に付き合った。書類を作り奴
にサインを求める。

奴め、手まで真っ黒だ。妙な筆跡で読みづらいが名はNyaru・hotepとか言うらしい。手続きが終わると、
「では、邪魔したな。これから引越しの準備があるのでこれで失礼する・・・」
そいつは事務所から出ていった。

「所長、おかしいですよ。どう考えても。変な犯罪に巻き込まれたらどうするんです。」
「変でも変でなくてもいいんだ。金を払ってくれるんだから別にいいじゃないか。
 無い部屋を借りようなんてよく分からんが、まあ世の中にはいろんな人がいてもいいだろう。」
「でも引越しとかいってましたよ。どっかの部屋に無理やり住み込まれたらどうするんです。」
「そうしたら追い出すだけさ。貸したのはあくまでも404号室だ。404号室ならいいが、
 それ以外はだめだ。」
それから、一週間後。
退去者がでるので、件の貸しビルへ明渡と現状の確認に訪れた。一週間前のことを思い出して
4階の様子もみてみようと思ってエレベータで4階に行くと・・そこには404号室があった。
大方、例の奴がどこかの部屋に無理やり住み着いて、部屋のプレートを書き換えてるんだろう。
所長め、やっぱり厄介なことになったじゃないか。

続く