[友人の引っ越し先]
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で、次の日の朝鈴木に怒ったら、「あ、やっぱお前にも見えたんだ」と言われた。
結局眠れないまま朝を迎えた俺は奴に切れながら「どういうことだ」みたいなことを喚いたんだけど、
奴がひたすら謝るもんだから、だんだん怒りもさめてきた。で、その後の会話。
「なんかさあ、引っ越したその日からずっとなんだよね。でももし俺にだけ見えるものだったらどうしようとか考えちゃってさ。
誰かに相談しようにも、親はそういうの信じない派だし。でもそっか、お前も体験したんだったら俺限定じゃないってことだよな、よかった」
「お前それだけのために俺を呼んだわけ?」
「っつーか、これ以上一人であの部屋で寝るの、正直無理だった。
だからお前も同じ体験したら、信じてもらえなくてもお前の名前出して親説得して引越ししようと思ってた」
「だったら最初っから親呼べばいいじゃねーか!」
「いきなりそんなこと言ってもストレスから来る精神病とか疑うぞあの親は! 
その上親には見えないものとかだったらどうするよ!? 俺檻つきの病院には入りたくない、マジで!」
最初から怪奇が起きることを知ってて、黙って泊めた鈴木には再び怒りがわいたものの、
そのあと朝昼兼用食をおごってもらったから許すことにした。怖かったけど、多分奴もかなり怖かったんだろうから。
俺に負けず劣らずのビビリだし。

その後すぐ、鈴木は別のアパートに引っ越した。
「良かったな」と言うと、奴は大きく頷いた後にポツリと言った。
「あそこさ、壁薄かったじゃんか」
「うん」
「で、結構隣の人の生活音が聞こえてきただろ」
「そうだね」
「でさ、一応交流はなかったものの、挨拶くらいはしてったほうがいいと思ったんだよ、出るときに。
それで、安いお菓子持って挨拶しに行ったらさ……」
「行ったら?」
奴は気味が悪そうな顔で言った。
「俺の両隣、空き家だったんだよね……」
「……」
同じ階には他の人間が住んでる部屋もあったらしいけど、でもそれであんなに生活音が聞こえるものなのか。
俺が聞いた生活音は、足音だったり水音だったりで確かに人間のものだったはずなんだけど。
とりあえず、俺の一人暮らしへの憧れはなくなった。実家サイコー。

これで終わり。つか長くてごめん。文字にするとありきたりだしたいしたことないけど、正直すごい怖かった。
こういうこと、実際あるんだなあと……幽霊だったのかなあれ。
人が死んだ部屋とかは言われなかったって言ったけど、アパート自体が相当ボロだったしなあ。
俺が体験した以外にも、その部屋に居る間いろいろ鈴木は体験したらしいけど、怖かったから何が起きたかはほとんど聞かなかった。


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