[巡り会い]

柘植某という自称グリーンベレーくずれの作家が居るよな。彼の著作した書籍にまつわる話なんだが。
体験がトラウマになって、この話に関しては2chでも主語と述語を巧く使う自信が無いけど聞いてくれ。
小学校高学年のとき、サバイバル術と護身術を内容とする本を買った。
柔術の外人や真樹某の護身・ケンカに関する本よりずっと現実的で強くなれると思った。
千円以上したそれを、買ったんだ。ボンボンやジャンプ、あるいはドラクエ関連の非電源ゲームでも買える金額だった。
その本を夕食の前に読んでいると、本に図書券のようなものが挟まっていた。
5000という数字、樋口一葉と小さい字で紹介してある。透かしまである。さすが、いつもの十二単女の10倍高額なだけはある。
でも、本屋では通用しない。図書券じゃないと思って、でも珍しいものだったから大事には保管した覚えがある。
その後はどこやったかわかんない。
怖いのは今年の1月。ブ○クオ○でコータローLを買いに行って、ついでに何の気なしに厚い本のところを通った。
あの、レジに行く道に並べてある本棚な。そこで、懐かしい例の本を見つけた。
105円だったから、ついでに買った。それを、また昔みたいに家で読んでたんだ。
そのときは、昔の図書券みたいなもののことは完全に忘れてた。

本を繰っていると、悪い見本役の会社員が地震に遭った帰りに、パンとジュースを買うという選択をする頁にさしかかった。
その頁から、端に折った跡がある。更に読み進めると、柘植が暴漢と戦う頁になる。
そこの戦いシーンに、シャーペンか鉛筆で線を引いてある。頁の余白にはロトの紋章が書き込んである。
事そこに至って、また手元に帰って来たのを確信した。台所の席なのも構わず、思わず半泣きになって抱きしめた。
ここでもまだまだ、図書券の事を忘れてた。
その日はATMでカネを出して来てて、1万円を遊興費に充てようと思ってた。
でも万札は2枚しか無いから、殊勝にも減額を考えた。なるべく少額に、と。でも千円札が3枚なのを見て、5千円にした。サツ1枚だ。
その分は柘植の書に托した。本に挟んだわけだ。
こんな板への書き込みにしては、と思われるだろうが5千円は健在だったし、きちんと純米酒やアクアビクスに使った。
これから先、5千円札をあれに挟むことはあるのか。あのあれは何だったのか。
続報を気長に待っててくれ。今は確信がある。あの頃のあれは、図書券じゃない。日本銀行券だ。


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