[妹と猫]

家で飼ってた猫について



母親は猫好きで、捨て猫を見つけるたびに家で保護して里親を探してやるのが趣味みたいな人だった。
けれど中には里親が見つからず家で飼うことになって猫が何匹かいて、
でも家の前の通りが車の交通量が多く、何匹かは車にひかれて死んでしまった。

でも家にはまだたくさん猫がいた。今思い出すと異常なくらいに。
多分少なくとも8匹くらい子猫やら成人した猫やらがいた。
思い出してみるとあれは異常だと思う。

ある冬の日のことだ。
住んでいたのが東北の雪の多い地域だったので石油ストーブは必須だった。
石油ストーブは火の上に鉄板のような所があって、そこにヤカンを置いてお湯を沸かしたりする。
時々ホシイモとかスルメなんか焼いて妹と半分にしておやつにしてた。懐かしい。

スルメを食べてるとその匂いにつられて猫が集まってくる。
それで必死にスルメを奪おうと猫ぱんちを繰り出してくる。
妹のスルメがばちん、と猫ぱんちでたたき落とされた。
それをすかさずトラ猫が奪い取ってしまった。
妹は取られた体制のまま固まっていた。

私は「あーあ」と呟いて、それから立ち上がり「ホシイモ持ってくる」と廊下に出た。
ホシイモは母方の祖母が毎年箱で送って来てくれるので傷まないように寒い廊下に保管していた。

段ボールの中を漁ろうとしゃがむと、猫の鳴き声がした。
それは「ぎゃっ」という声に近いもので、何事かと部屋に戻った。

部屋では妹がストーブの前に立っていた。
少し離れたところでさっきのトラ猫が後ろ脚の肉球をそっと舐めていた。
カーペットに薄く血が滲んでいた。
近寄り見てみると肉球が焦げていた。皮膚がごそっりはげて、赤く血が滲んでいた。

「電話のところから落ちてきたよ」
妹ストーブから少し離れた場所にある、電話機を置いた棚を指差し言った。
「猫ってばかだね」

妹はにたりと笑ったが、私は心の中で「馬鹿はお前だ」と思った。ふたつの意味でだ。

猫は高い所から着地するとき前脚から着地する。
つまり後脚を先にストーブの上についたりはしない。
誰かが猫の脇に手を入れて、ストーブの上に置いたりしない限りは。
この部屋には妹しかいなかった。犯人は妹以外の誰でもない。
私は自分のおやつを取られたくらいで、そんなことをする妹を本当に馬鹿だと思った。

怒るべきだったのかもしれないが、どうせ喧嘩になれば勝てるはずがない。
私は詰問したりはせずに、ホシイモを焼かずに食べた。
しかし妹は焼いて食べていた。
猫の肉球を焼いた鉄板の上で、

猫でまた思い出したんだが、家で猫の変死体が2回程見つかったことがあった。

1匹目は玄関の靴箱の下。
そろそろ夏ってくらいに臭い出して覗いてみたら猫の腐乱したい発掘。
2匹目は2段ベッドの下。
小さい子猫で特に冷え込む日だったから凍えてしんだのかもしれん。
でも2段ベッドの1段目は妹が使ってました。

・・・まさか、な


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