[都会人]

去年の就活中のこと。
朝9時頃、東京の京急穴守稲荷駅のホームで電車を待ってたら、視界のスミに人が寝てるようなのが入ってきた。
距離があったのでチラッと見ただけで、「ホームレスかサラリーマンのおっさんが朝から酔っ払って寝てんのかな」ぐらいにしか思わなかった。
そしたら一瞬ビクッとそれが動いたので、なんだ!?と思って見た。

近づいたら、おばあちゃんがうずくまって、というかうつ伏せになって痙攣していた。
ただごとじゃないと思ってとっさに抱き上げ、「大丈夫ですか!?聞こえますか!?」と聞いたが、目は遠くを見たまま。ぼ〜っとしていて、体は細かく震えていた。
すぐに119して、駅員を呼んだ。
救急車が到着して隊員がくるまでの間、おばあさんに話しかけたり、鞄に薬や体のことに関する情報がないか調べたりしたが、そうしていたのは俺一人だった。どうしていいかわからず、とにかくあまり動かさないようにして、息と脈はあったのでコートをかけるなどした。
次々やってくる電車に周りの人は普通に乗り込んで行き、誰一人として駆け寄ってこようとはしなかった。

冷や汗がでまくって、テンパりまくっている俺と痙攣して反応がないおばあちゃんをチラチラ見るだけで、普通に電車を待ち、普通に乗って行く人達。
駅員さんと声をかけたりなんかしながらも15分か20分くらいしたときやっと救急隊員が来て、搬送していった。
その日は面接があったが会社に事情を説明し、救急車に付き添った。
病院に着き、しばらくして身内の方が来た。
午後を回って、医師から、もう大丈夫だと言われ、帰った。

いざ緊急のときに、どうしたらいいかわからない恐怖と、いかにも都会的な周りの人達の対応の冷たさは、忘れない。


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