[妖精さん]

道端で私の一番の宝物ををみつけたのは、小学生の頃だったかな。
ダチョウのね、可愛い縫い包み。
勉強机とか写真立てとか、女の子もののお洋服とか一杯あった中に、埋もれるようにしてた。
随分長い間埃かぶってたみたいで薄汚れてたし、所々解れてた。
その頃、縫い包み大好きで集めてたのもあって。
可愛い縫い包みが、みすぼらしい姿で捨てられてるのがたまらなく嫌で、もってかえったの。
そしたらしばらくしてメルヘン♪

宿題が、私がやったおぼえもないのに、いつのまにか終わってたり。
途中でとまってたFFVは、確か浮遊大陸出た後、海の上で陸地がみつからなくてやめちゃったはずなのに。
浮遊大陸にいて、いつのまにか全員たまねぎ剣士でオニオン装備してた。
それまでの私って、正直宿題はやり忘れるし、成績も良くなかったし。
飽きっぽいからゲームだってやりこむ前にやめちゃってたんだよね。
なのに、身の覚えのないテストで高い点とったからって、お小遣いはあがるし。
正直何がなんだか、わけわからなかった。
近所の神社の巫女のお姉さんに、いつも仲良いねとか一人でいる時にいわれたり。
でも、良いことばっかりだったから、きっとあの縫い包みに宿ってた妖精さんがご恩返ししてくれてると思った。
ダチョウの縫い包み一番のお気に入りで、硝子ケースにいれて埃かぶらないようにして。
その上毎日手入れしてたんだもん。

でもどのくらい後だったかな。
通学の帰り「カヨちゃんっ!?」て凄い声が聞こえたの。
縫い包み拾ったゴミ捨て場のあるマンションの前で。
ふりかえったら貧相なおばさんが立ってて、私の事睨んだ。
そんなことあるはずないって首を振って、今度は怯えたような顔してたかな。
そしたらなんでか、わけもわからず凄く、涙が出るほど頭に血が上って。
それがなんだかわからないけど、いちゃいけないって思って家に帰った。

その日から不思議な事っていうのが、それまでとまったく逆転しちゃった。
悪い事ばかりになったの。
ファミコン壊れたり、テストの最中居眠りしたってお母さんに怒られたり。
やっぱり身に憶えがないんだ。

で二週間くらいかなぁ?
久しぶりにとおりすがりに挨拶した巫女のお姉さんに、ちょっと神社裏に来てって、呼び止められたの、すっごく真剣な顔で。
知ってる人でもみだりについてっちゃだめって教えられたから、渋ったんだけど。
神主さんにも一緒してもらうからって言われて、それでついてった。
そしたらね、私のことすっごく優しげな手つきで撫でてくれるんだ。
神主さんはわけもわからず棒立ち。
そのうち脱がされて、裏手の井戸の水を肌にかけて撫でてくれるの。
神主さんは赤面して顔そっぽむけてた。絶対あれロリコンだよねー、今ならわかる。
まあいいや。
なんでこんなことしてるのっておねーさんに聞いたら。
「タタリ、って知ってる?」って。
その後なんだかへんな紙切れをおったジグザグみたいなのつけた木の棒ふられたり。
夜になるまで色々されてから帰されたかな。

今でもダチョウの縫い包みは大切にしてる。
生きてるんだこの娘。
存在感が違うの、他の人形は供養に出しちゃったんだけど。
あれだけは、声かけると、他の人形と違って、妄想じゃなくって、お返事くれるんだ。
ゆかちゃんっていうんだよ。
私が死ぬまで、私の中で、私の人生の半分もらうかわりに、私の人生のお手伝いしてくれてるの。
ゆかちゃんおかあさんに見殺しにされたんだって、嫌いだからって。
だから復讐したいって言ってたんだけど、そうしたら私塀の中でつまらないでしょ?
塀の中でつまらない人生半分過ごすのと、楽しく塀の外で暮らすのどっちがいいって言ったら、わかってくれたよ。
私達、仲の良い姉妹なんです♪


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