[道路を走る女]

だいぶ前にちょっと流行った都市伝説が有りました。
走行中の車を追い駆けてくる女とか、気が付いたら
車の横を人が獣の様に四足で駆けて行った、とか
バージョンは様々ですが、要するに道路での人と
車にまつわる恐い話です。

義理の兄は警官で、生活安全とかいう部署に勤めて
います。刑事と違って、結構規則正しい時間で勤務
する事が多いらしく、よく仕事が終わった後に飲み屋
とかで御馳走してくれる事があります。
そんな義理の兄から聞いた交通事故の話なんですが。

1)車を追い駆ける女
横断歩道を渡っていた女が4WD車に跳ねられた。
4WDの右前方に接触した女の体はその場で回転
して、通り過ぎていく4WDの右後方のハシゴ
に再度接触した。その際にハシゴに右手が絡まった
女は4WDが停止するまで引きずられた。
現場の血痕から、女の両足が道路面に接していた事
又、右足と左足が別々に血痕を残している事が判明
した。
目撃者の証言が
『女が、車に手を伸ばして追い駆けていた』
というのは、これを見たからだと思われる。

2)四足で道路を駆ける女
国道でトラックに女が跳ねられた。
最初に前輪で踏まれた女の体は、そのまま後輪に
踏まれた。
高速回転の後輪によって回転した女の体は、後輪の
泥除けカバーを外れて道路に飛び出した。
現場に残った血痕等は、両手、頭、背中、両足の
順に残っていたが、数Mで両手、両足の痕が続く
様に変化していた。
コレは後輪の泥除けカバーから飛び出した女が、前方
へ回転していた事、その後に何らかの原因で両手と両足
のみが道路に接した姿勢でバウンドしながら道路を
飛んでいった事を現している。

あまりの凄惨な話に言葉が出てきませんでした。
「へえ・・・やっぱり都市伝説の元ネタって
あるんっすねぇ。そういう話なら納得ですよ」
と言うと、義理の兄はニヤリとして言いました。

「あっははは。バカ。そんな話有るわけねえだろ」
「え?」
「ちょっとからかっただけだよ。お前、オレオレ
とかに引っ掛かるなよな、頼むぜ」

義理の兄は、警官とか弁護士とかって前置きすると
如何に話に現実味が出てくるか、という例え話を
したかったそうなのです。
あの手この手のオレオレ詐欺もそうですが、食事
しながらこの手の話を即興で思いつく、義理の兄の
職業の方がよっぽど恐いなぁと感じました。


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