[ひき逃げ]
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しかし、そこには誰も居なかった。
誰一人いない。
車も無い。
テントもない。
人がいた気配も跡形も無い。

とにかくもう真っ暗闇でさっき見たものもあって恐くて恐くて。
わけがわからなくてただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
仲間の携帯に連絡を入れても返答は無い。
パニック状態の俺。とりあえず移動してみようとしたその時……
俺の携帯が鳴った。
真っ暗闇の山の中、突然流れてくる着メロは恐い。
非通知着信のその電話。恐る恐る出てみると…
男の笑い声。そして低い声で…

「お・か・え・り…」


声の主は仲間の1人だった。
酔いも手伝って全員揃って俺をハメたらしい。
一斉に片付けをして俺が帰ってくる前に隠れたと言う。
さらに数人が面白がって外灯の下に立っていたのだそうで。
怪談でもなんでもないが、
俺にとっては死ぬほど洒落にならない話だった。

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