[こっちを見る女]

ビビリの僕はテレビで稲川淳二が出てるだけでチャンネルを変えます。
恐いもの見たさで心霊写真なんか見ちゃった日にはトイレすら我慢するほど。
決して霊感がある方ではないのですがそんな僕も心霊現象、つまり霊を見たことがあります。
夏休みってサークルのメンバーとドライブにいくことが多いんです。
でも行くとこって限られてしまって海なんかいっても盛り上がらないんで自然と心霊スポットにいきます。
この日は神奈川県逗子市の小坪トンネルに行ったんです。
有名ですから知ってる人は知ってると思います。

このトンネルにはあらゆる霊がいると言われてますが何も現れず。
その隣の逗子トンネルの上にあるまんだら堂に続く道があり、さらに奥にいくと火葬場があるらしいので向かったんです。
トンネルの横の長い階段を登っていきます。
なんか階段を上ってると違う世界へと向かってる感じがします。
この頃から嫌な気はしたんです。

階段を上るとちょっとした広場。
見た目は普通の山のようで草がたくさん生えているところです。
このまま火葬場まで一気に行くという流れだったんですが僕は夏だというのにすごい寒気を感じました。
耳なりも止まらず先の通路へとなかなか進むことができません。
後から知った話だとこの広場の奥に井戸があり女が顔を覗かしているそうです。
実際に見ている訳ではないので「ビビってるからそうなるんだ」と自分に言い聞かせ先へ進みます。
山に入り火葬場への道を進みます。
しかし僕の足が前に進みません。
なんてことない道なのに足が動きません。
周りの木が月の光でボンヤリ白く光っていて人影に見えてきます。
恐くなった僕は目をつぶったのですが白い影はきえません。
なんでだ?と思った僕は目をつぶったまま影に視点を合わせました。

その影は女。
その女は着物を着た真っ白な顔の女でした。
目をつぶってるはずなのに目が合ってるんです。
目をそらしても目が合い続けます。
視線を外すことができないのです。
これは想像してるんだ、だって目をつぶってるんだから。
っと僕は覚悟を決めそーっと目を開きました。
そうしたら僕の視線の先、距離でいったらほんと目の前、木と木の間から女がこっちを見ていたのです。
僕は目をそらすことも背を向けることもできませんでした。
だって足が動かないのだから。
それはそれは見とれてしまうくらい恐ろしい程優しい笑顔でした。
この間耳鳴りは止まっていました。
その後どのくらいたったのか分からないけど僕はおおきく深呼吸をして
「俺もうムリ、戻るわ」といって来た道になんとか振り返りフラフラする足取りでゆっくり広場へと戻りました。
階段を下り終えて友人は「変な感じはしてたが見てはいない」と言っています。
そうかもしれません。
でるでると考えてしまうとそう見えてしまうって話よく聞きますからあれは僕が作り出した幻影なのかも知れません。
真実だとしたら女がなぜソコにいたのか、なぜ笑って見てるだけだったのか、全く分からない謎が残ります。
それが嘘でも真実でもあの女の笑顔だけは頭に焼きついて2年たった今でも忘れることができない。


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