[床屋の息子]

小学生の頃の話なのでウロ覚えな部分がありますが…
あれはたぶん小学4年生くらいの時ですが、家の近くに当時はまだ空き地やリンゴ畑が沢山あり
外で遊ぶワンパクな僕達には絶好の遊び場でした。
(今は打ちっ放しのゴルフ場やスーパーやパチンコ屋などが沢山出来てしまって空き地はほぼないです)

当時仮面ライダーの小さいフィギアを戦わせる遊びが流行っており、確か僕はカメレオン?っぽい奴を
買い与えられていたと思いますが、それを持って皆と外で遊んで居ました。
その日はいつも一緒に居る仲良し三人で遊んでいたのですが
そこに数日前に越してきた転校生が現れ、そんな遊びより楽しい事があると言い出しました。

正直僕はフィギア遊びに飽きていたので、新しい遊びというものに興味を持ち
乗り気ではなかった友達を説得してその新しい遊びを四人でする事にしました。
しかしフィギアを失くするかもしれないという理由で一人の友達がフィギアを持って一度帰るから一緒に帰ろうと言い出したのです。
家まで10分もかからない距離だったのですが僕は面倒だったのでそれを断り、待ってるから行っておいでと言ったのですが
一人で行くのが嫌なのか僕ともう一人を必死に説得します。
それでも僕はそれを断り、フィギアを地面に置き、「ここにまとめて置いておけば大丈夫だ」と逆に彼を説得しました。

彼は渋々そこに置いて置く事を承諾し、新しい遊びのルールを三人で転校生に聞きました。
転校生の言う遊びとは確か以下の様なものでした。
「まず、皆でわっかになって箸を掴む方の手(右手)で隣の人のもみあげを掴んで目を瞑る、
僕が合図したら全員一斉に目を開けてすぐにまた目を瞑るんだ」
その説明の途中か説明が終わった後かは忘れましたが、誰かが
「何の意味があるの?」と口を挟みました。
僕はよくわからない遊びと、言い知れぬ恐怖からそのやり取りを息を呑んで聞いていました。
転校生の彼は「僕もよくわからないけれど、凄く面白いし二度目に目を開けた時には凄い事が起こるはずだよ」
と、曖昧な回答をしたと思います。

怖かったですが、幼心に物凄くワクワクして、早くやろうと促しました。
そしてそのゲームが始まり全員もみあげを掴み目を瞑ったのですが、僕はこっそり薄目を開けていました。
転校生の彼はニヤニヤしながら隣ではなく正面(僕の左隣)の友達のもみあげを触ったり離したりしてた気がします。
はいっ!という彼の合図で全員目を開けました。
別に何の変化もありません、そしてまた全員目を瞑りました。
さっきと一緒で僕は薄目を開けていましたが、今度はさっきと違い
目でみる光景よりも先に声が聞こえてきました
「ひっ ひっ」
「申します ああっ 申します」
「う”〜う”〜」
えっと思って目を開けると僕はなぜか全身ビショ濡れでドブに浸かっていました。
周りには誰も居なくて不安になった僕は場所もハッキリしないその場から走って
どうやって帰ったのかはわかりませんが、家に帰ってきました。

服を汚した事やフィギアを失くした事で親にめちゃめちゃ怒られましたが
恐怖のあまりその日あった事を親にいう事は出来ませんでした。
次の日学校に行くと昨日一緒に遊んでいた友達がなぜか坊主になっていました。
(彼の家は床屋でした)
どうしたのか聞こうとすると彼は
「いいか、昨日の事は僕達だけの秘密だから誰にも言うなよ?フィギアは僕のお婆ちゃんが預かってる、偉いお坊さんに預けたから大丈夫なはずだから」
と言うので、僕はわけもわからず頷くしかありませんでした。

その日以来転校生を見てない気がします、そもそも転校生だったのかどうかも正直怪しいです。
そしてその友達ともその後疎遠になって行き、遊ぶ友達も変わってしまいました。
曖昧な記憶ですが、とにかく怖かった、とか気味が悪かったなーって話でした。


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