[手を触れるモノ]

消防の頃まで毎年12月31日は親戚中の男親と子供たちが集まりちょっとした遠出をしていた。
今思えば大掃除の邪魔になるからと追い出されていたんだと思う。
年に一度の集まりでうちの親戚の男親は異常に子供に甘い。
従って毎年楽しみにしていた。

あれはいつだったろうか、今となっては思い出せないが都内の○川大師(うろ覚え)に行った時のこと。

そこは建物に地下があり真っ暗闇の中手探りでワッカを捜し出しそれを握ってお願い事をするという少し変わった所だった。
地方にもっと有名な場所があるがそれをこじんまりした感じ。
7人くらいその時いただろうか。
何度かきたことがあるところなので対して不安はなかったが子供も小さいということで一人の親が先頭に立ち手をつないで入るということになった。

列の先頭は従兄弟のおじさん。
おじさんがまず手探りでワッカを捜し出ししばらくしてから次の人へ手渡す。
それを人数分繰り返す。
そして私の番。
前の人から手渡されたワッカを握りしめ願い事を心の中で唱え終わろうとしたその時。
暗やみの中冷たい手がすっと私の手に触れた。
私が最後尾だった。
他の参拝者がきたのだろうと私はワッカから手を離す。
みんな終わったか?とおじさんの声がしたので返事をした。
そしてまた明るいところまでぞろぞろと手探りで歩きだす。
ここは地下の前半半分は真っ暗闇で後半は蝋燭やらで少し明るい。
そこまでたどり着くとみんな手を離し後はゾロゾロと歩いていた。

ふと疑問に思った。
私の次にワッカに触った人がこない。
声もしない。
何分団体行動だったので歩みは遅かったはずだ。
不思議に思いながらも外に出る。
トイレやら次の行き先やらでしばらくその場にいたが誰も出てこない。
ふと父にさっきの出来事を話す。
父が受付に足を運んだ。


私たちの後には誰もいなかった。

数年後。
オカルトな体験がしたいと友人たちが言いだしたのでその場所を訪れた。
が、厨房のみでは入れないとのこと。
わざわざ他県からきたと駄々をこねると案内人がついてくれ中に入れてもらえた。
中には入る。
丁寧に説明をしてくれ恐縮した。
そして中程を過ぎたあたり。
蝋燭がともる通路で案内人が口を開いた。

「ここは水子を供養しています」

「水子?」

「亡くなった赤ちゃんのことですね」

………
あの時の事が鮮明に思い出された。

その時はじめてそのことに恐怖を感じた。


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