[フィギア]

去年までオレがバイトしてた居酒屋に、Yって奴が入ってきたんだ。
バイト仲間は男がオレ達3人、女の子が4人居たんだけど結構仲が良くて
店が終わった後とかよく飲みに行ってたんだよね。
新人のYはみるからにオタクっぽい奴で、ぜってー変なアニメとか
フィギュアとか集めてるんじゃ?って感じだった。
試しに飲み会に誘ってみたら女の子の1人に惚れ込んじゃって大変な事に。

「君のイメージだから」なんて言ってアニメか何かの主人公のフィギュア
をプレゼントしたりし始めてるうちは彼女も「きも〜い」とか言って
影でバカにしていたんだ。Yの居ない飲み会でYをネタにしてね。
1ヶ月くらい経った頃、彼女が深刻そうな顔して言った。
「あいつヤバイよ。3個もキモイ人形持ってくるからさ、もうお人形は
要らないって言ったら、この前送り主の書いてない小包が届いたの」

開けてみたら中には、フィギュアが入っていた。フィギュアの顔は真っ白
のノッペラボウで下着姿だった。
しかも下着は彼女の物と同じ形とガラになっていたらしい。
「あいつ絶対家に来たんだよ。洗濯物を見て行ったんだよ。マズイよ〜」
オレ達は店長に相談したんだけど、Yは店を辞めていた。

ひとまず安心したのもつかの間、翌日女の子の家にフィギュアが届いた。
今度も別の下着に似せた物をはかせていたが、ブラジャーが破いてあった。
そして次の日にも届いた。今度はパンティーが引き裂いてあった。
店長に言うと「警察に行くか?」と聞かれたが、大げさにしたくないと
女の子が言うので、オレ達バイト仲間の男だけでYの家に行ってみる事に
した。一応Yと話し合ってみて、それでもダメなら警察に通報しようって。

アパートに着いたオレ達と店長は、Yを呼んだが応答が無かった。
何の気なしに店長がドアのノブに触ると、鍵が掛かってない。
「あれ?開いてるぜ」と言って店長がドアを開けた途端、皆アッと叫んだ。
オレは腰が抜けそうになった。ドアの前にマネキンが立っていたんだ。
マネキンの顔には、女の子の顔写真が貼ってあり、マネキンの下半身の部分
と胸の部分にはベタッとした染みが付いている。玄関中に漂う異臭を嗅ぐ
までも無く染みの正体は分った。最悪だった。
「あのヘンタイ野朗!」
バイト仲間が思わずマネキンの顔から女の子の写真を剥がした。

するとその下にもう一枚写真が貼ってあった。Yの笑った顔の写真だった。


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