[赤ババア]
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幽霊とかじゃないけど、俺が小学校の時に体験した話し。
ちょっと長くなるけど語ってみる。

小学生の頃、俺は埼玉県南のとある街に住んでいたんだが、
自宅周辺に「赤ババア」と呼ばれていた、基地外が良く出没していた。
ババアと言っても、多分当時30代後半〜40代位のオバハンだったのだが、
皮膚病なのか何なのか、顔中赤いブツブツで覆われていて(故に赤ババア)、
いつも裸足という不気味さだった。
赤ババアは、他人の家の玄関先の路面で寝ていることが多かった。
特に誰の家の前とは決まってなかったと思うが、赤ババアのことを知らない
通りがかりの人が、行き倒れと勘違いして、警察や救急に通報してしまうことも
しばしばだった。また、それと同じ位、近所にあった土手際のイチジクの木の下で、
ボーっと立ち尽くしている事も多かった。
ま、それだけでも気持ち悪いし、玄関先で寝込まれるのも迷惑な話しなのだが、
住民に何か危害を加える訳ではなかったので、大人達は生暖かく見守っていたように思う。

しかし、子供達はそうはいかず、怖いもの見たさから、他人の家の前で寝ていたり、
イチジクの木の下で立ち尽くしている赤ババアを見かけると、「誰が一番近くまで行けるか」
を競い合ったり(「勇気ある少年」という名の遊びだった)、遠巻きに赤ババアを馬鹿にする
文句を叫んでは逃げてみたりと、赤ババアを挑発して遊ぶのが常だった。
ま、大体想像がつくと思うけど、こうした挑発行為は次第にエスカーレトしていき、
赤ババアに当たらない程度に、石や棒を投げつけてみたりするようになっていった。
幸いなことに、こうしたイタズラをされても、赤ババアはずっと寝てたり、ボーッとしている
だけで、追ってきたり、怒ったりすることはなかった。
それで俺達も安心して赤ババアをからかっていた面もあったと思う。

あれは、小4の夏休みのことだった。
友人二人と土手で遊んでいた俺は、例のイチジクの木の下に赤ババアが立っているのを見つけた。
すると、友人Aが、「じゃあ、勇気ある少年ごっこしようぜ!」と提案した。
どれだけ赤ババアに接近できるかというアレだ。
この頃は、敢えて赤ババアの気を接近する奴に向けるために、石や棒等を投げつけて気づかせる
のがデフォになっていた。
まず言い出しっぺのAが赤ババアへ近づいて行くこととなり、Aがある程度進んだ所で、
俺と友人Bが手近な石だの棒だのゴミだのを赤ババアの足元附近めがけて投げ始めた。
Aが赤ババア迄10m位の所に進んだ所で、赤ババアが投石に気づき、ゆっくりとこちらへ振り向いた。
今にして思えば、それで目的は達した訳だから、そこで投石をやめておけば良かった。
しかし、調子に乗っていた俺達は、「Aを援護しろ〜!」と、これも今にして思えば訳のわからない
理由で、更なる投石を続けたのであった。
俺が投げた奴だったのか、Bが投げた奴だったのかはハッキリしない。
もしかしたら、俺が投げた奴だったかもしれない。
石が赤ババアに当たってしまったのだ!

続く