[身に覚えのないメール]

するとほとんどのメンバーが

AAAAA→BBBBB→CCCCC→●●→死亡

DDDDD→EEEEE→●●→死亡

となっている。

「主要メンバーが●●から一気に抜けて、次のバンドを組んだのか…。それにしても『死亡』ってバンド名はちょっとじゃね。
この名前のままじゃ絶対にメジャーデビューできないだろ」と思った。
バンドって変な名前(失礼)付けるじゃない? だから『死亡』もバンド名だと思ったのよ。

違った。メンバーのほとんどが死んでいた。

よく調べてみたら、プロモーションビデオの撮影で、メンバー全員が橋から川に飛び込むシーンがあったらしい。
その時、思っていたよりも川が浅くて、底にぶつかり死んでしまったそうだ。
ひとりは無事だったが、彼も事故から1年後に自殺してしまっていた。

Aさんは亡くなった初期メンバーの意思を受け継いで活動を続けている人だった。

調べたことを後悔した。いい気分ではなかった。

それからさらに2年後。

「よう、どうしてる?」

それしか書いてないメールが届いた。

すぐにピンときた。これを出したのはAさんの元バンド仲間で、一度はバンドを組んだものの、
音楽性の相違とかそんな理由で喧嘩別れしてしまった人なんだろうと。
時が過ぎて、ふと懐かしくなってみたりしたんだろうと。
でも、なれなれしいメールは出せなくて、ぶっきらぼうなメールを送ってよこしたんだろうと。



と同時に、その差出人が●●の初期メンバーのひとり、死んだ人だとわかった。理由はない。うまく説明できない。
ただ、猛烈ないきおいで「死んだメンバーの誰か」だと理解した。本当になんで分かったのかは分からない。
本能がそうだと告げている、そんな感じだった。

怖くて怖くて手がふるえた。震える手でケータイのバッテリーを抜こうと思ったが抜けない。電源を切っただけじゃダメな気がした。
何度も何度もバッテリーを抜こうと試みたが、手が震えてダメだった。

仕方がないので、折った。折りたたみタイプのケイタイを、ヒンジの部分から折った。大声で
「こんちくしょー!!!」って叫んでた。汗だくだった。

「もうこの番号は使いたくない…」と思ったのですぐに解約して、違うキャリアにしましたよ。

ケイタイの番号って、一定期間寝かせた後、また使い出すって言うじゃないですか。
あの番号がいずれまた誰かの所に行くかと思うと、ちょっと怖い。


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