[電話]
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泥棒かも?と恐ろしくなったHちゃんは携帯のリダイヤル番号を見ました。
間違い電話などでは有りません。しっかりと自宅の電話番号になっています。
警察に通報しようかとも思いましたが、何かの間違いだった場合の事を
考えたHちゃんは、自宅は店から自転車でも20分の距離だから、と言って
Uさんとボーイさんに一緒に部屋まで言って欲しいと頼んだのです。
店の前でタクシーを拾い、5分ほどで3人はHちゃんのアパートに着きました。

部屋は2階だったので、Uさんの提案でUさんとボーイさんがドアの前に行き
下の通りでHちゃんがもう一度電話してみる事になりました。男二人でドアを外から
押さえておけば、中から不審者が出ようとしても安全だと言うのです。
準備が整い、Hちゃんが部屋へ電話をかけました。

さっきと同じで5回のコールの後、留守電のメッセージが聞こえました。
『ただ今留守にしております。ピーという発信音の・・・』という所でいきなり
「オアアアァー!」という男の物凄い絶叫が聞こえて電話は切れました。

部屋の前に行き、Uさん達に説明すると、確かに中で電話は鳴っていたがそんな
悲鳴なんか聞こえなかったと言います。5回鳴って切れた、と言うのです。
そこでUさんが携帯を受け取って、リダイヤルしました。すると話中になっています。
「何で、話中になるんだろう?」さっきは確かに中で電話が鳴っていたのに。

Uさんを先頭に2人の男性は部屋へ入りました。Hちゃんは恐くて後ろに隠れていたそうです。
「あれ?」と言ってUさんが部屋から出てきました。手招きをします。
見ると床の上に電話は有るのですが、ひっくり返っているのです。
電話以外に部屋の中は何も変わった様子は無く、当然全ての窓にもカギは掛かったままです。
ボーイさんが「ひっくり返ってたから話中だったんだろう」と言いましたが
Uさんは恐い顔をして「いや。さっきは確かに電話が鳴ってた。この状態では絶対に
掛かる訳がない」と言って、もう一度その場で携帯から電話をかけてみたそうです。
案の定、話中のままでした。

結局その晩、Hちゃんは友達の家に泊まって、Uさんが電話を持ち帰る事になりました。

「メーカーから連絡が有ったぞ」と言ってUさんがお店に来たのは2週間経った日でした。
別に壊れてはおらず、自然に話中になるような事も無かったけど、と前置きしてから
「ただな、留守録用のテープはお前が取り替えてたんだろうけどな」と言いました。
Uさんによれば、電話機内蔵の留守録機能があってその中身を再生したら、何か借金取立て
の様な催促の通話が限度一杯に録音されていたそうです。結構シビアな取立ての様だった
と言います。その手の機能には疎いHちゃんは当然知りませんでした。

「それとね、お前が聞いたのってコレじゃないか?」と言ってカセットプレーヤーを
出したのです。何でもイタズラ電話に対処する為に、ボタンを押すと相手に何種類かの
メッセージや音声を聞かせる機能が付いているのだそうです。それを再生してくれる
と言うのですが、気持ちが悪いので止めて、断ると「大丈夫だから」と言って再生したのです。

物凄い騒音がします。地下鉄の轟音の様な感じです。グワーン!って音です。その他にも
キーンとかピーーとかの高音のノイズが有りました。
イタズラ電話がかかって来たら、ボタン一つでこの手の音を相手に聞かせるのだそうです。

Hちゃんは「でも、何でそんな機能がひとりでに働いたか分からないし」と言います。
因みに前の住人に大家さんから聞いてもらっても、電話の持ち主ではなかったそうです。
電話はUさんに頼んでメーカーで処分してもらったそうです。


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