[本家]
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さらに一月ぐらいたった時のこと。相変わらず俺は彼を避けていたが、ジャクソン君にもぽつぽつ友達ができたようだ。

その友達がジャクソン君にある質問をした。
「なあ、なんでジャクソンはそんな変な髪形してるの? 誰にあこがれてるの? 何を目指しているわけ?w」

ジャクソンは見事な七三分け、いや八二分けといったほうがいい髪形をしている。
それだけならさほど変でもないのだが(七三分けの高校生ってあまりいないけどね)、
両サイドと後頭部を思いっきり刈り上げている。「ツーブロック」って言うの?そんな感じだ。しかも、ポマードで髪をペッタリとなでつけている。

もし漫画「オメガトライブ」を知っているなら、梶秋一を思い出してほしい。あるいは芸人の鳥肌実をググってくれ。


「なぜ変な髪形をしているのか?」これは誰もがずっと思っていたことだった。
ただ、ジャクソン君はなんとも危ない暗いヤツだったので、誰も聞かなかったのだ。

教室にいた者、みながジャクソン君の答えを待っていた。そっぽを向いて興味がないふりをしつつ。

「何でそんな変な髪形なの?」

そう聞かれた瞬間、ジャクソン君はそれまで見せたことがないほどの勢いで

「取り消せ! その言葉を取り消せ! 変だと!? この髪型が変だと!? ふざけるな! 
この髪型はジャクソン家に代々伝わる由緒正しい髪型だぞ! 
ジャクソン家を継ぐ者は誰もがみなこの髪型にするんだ! さあ、今すぐその言葉、取り消せ!!」

ジャクソン君は鬼のような表情で、とても冗談とは思えなかった。質問したやつは真っ青な顔で謝罪した。

それ以降、ジャクソン君に話しかけるものはいなくなった。

俺は「うちがジャクソンの本家」などと冗談を飛ばしたことがどれほどヤバイことか理解した。
背筋が少しずつ冷たくなっていった。

その後は卒業まで特に何も起こらなかったが、ジャクソン君には絶対に近寄らなかった。

念のため言っておくが、うちのジャクソン家にはそんな髪型を継ぐ風習はない。


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