[火事の後]
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ぺたん、ぺたん、ぺたん。
音が立ち止まった時には私、発狂寸前。だってすりガラスに俯き加減の人影が映ってる。
涙がボロボロあふれてきて「ごめんなさい、ごめんなさい、帰って…!」ってとにかく祈ったけど、無駄だったみたい。
人影はゆっくり動いた。頭を下げて、お辞儀するみたいに。
そこで私、絶叫。
真っ赤に爛れた左手と顔の上半分が入口からこっちを覗いた。
すると奥からバンッて音がして「何!?」ってバイトの男の子の声が。
そこでやっと動けるようになって、必死で目を瞑って頭を抱えながらとにかくキャーッ、キャーッて叫んだ。
端から見たら本当に発狂してる人みたいだよね。
男の子が駆け付けて抱き締めてくれた。
「落ち着いて!どうしたん!落ち着け!」とか叫んでた気がする。
暫くしてやっと落ち着いてきた私(この間に本当の客が来なくて良かったw)は、超泣きながらことの顛末を説明。
男の子は黙って話を聞いて
「怖かったな、でも大丈夫、俺も休憩からすぐ戻ってこっち居るから」
って言ってくれた。その頃には匂いも消えてた。
その後は何組か客来たけど、案内もオーダーも全部男の子がやってくれた。
テーブルを片付ける時は二人で行って、特に仕事が無い時はステーションでずっと慰めてもらった。
その後はとにかく怖いので三日間程休みを貰って、その後一ヵ月でファミレスを辞めました。
ちなみにその日あった火事では死人は出ていなかったみたいだから(運ばれた人は重傷だけど意識はバッチリだったらしい)
覗いて来た人物と関連性は無いかもしれないけど。
まぁ一応ってことで、書いておきました。