[嘘つき]
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Dと教室に入る。
机や椅子はほとんど無い。閑散とした教室。
部屋の真ん中辺りに、何人が倒れている。見覚えのある服装だ。
背後からの気配は・・・まだ、ない。Dが居るだけだ。
俺は倒れている人の元へ、ゆっくりと近づいて行った。
そこで、ふと窓の外を見た。辺りは真っ暗だ。
月明かりのみ。他には何も見えない。
木々に隠されて、点けたままのテントの明かりも見えない。
見えない。見えない・・・?明かりは・・・見えない!?
俺は気付いた。
遅すぎたが、気付いた。
倒れてる人を見る。3人だ。やはり3人だ。6人じゃない。
騙された。
嘘つきは部長じゃない。いや、部長“だけ”じゃない。
ここからはどうやったって、テントの明かりは見えない。
女の子は嘘つきだ。
女の子の連れは居なかった。そもそも女の子なんて、居なかった。
倒れてるのは、俺の知っている3人だけだ。
部長も嘘つきだ。
そして、当然、Dも・・・嘘つきだ。
今、俺の後ろに居るDも。
何か聞こえる。子供の笑い声だ。
楽しそうな声。いや、狂ってるようにも聞こえる声だ。
俺はこれから、どうすればいい?誰か教えてくれ。
20時38分。Dがそっと、俺の肩に手を置いた。
俺の時間はここで終わる。