[消えた10円玉]

去年の夏の話でし。

「こっくりさんしない?」
最初に言い出したのはたしか、好奇心旺盛な怖いもの知らずのJだった。
皆酒が入っていた為、口々に同意する。

私たち4人全員が集まるのは、久しぶりだった。
中学を卒業して、初めての夏休み。
各々、進学したり、就職したりと新生活に振り回されつつも、
連絡は欠かさなかった。

「最初、どうやるんだ?」
「ああ、それなら…」
黒一点のRが尋ねる。
それに対して私は「いいサイトがある」と、
本格的なこっくりさんのやり方が載っているサイトを開いた。

「まず、半紙を用意」
「半紙?」
「習字紙。習字かばんの中に入ってる」
私の指示に従って、3人が用意を進める。
文字を書く墨には、自分たちの唾液を混ぜて、供える酒を準備。
「お酒?酎ハイでいいかな?」
「泡盛とかは?」
「あ、それいいわ!」
本当はお酒は清めなくちゃいけないらしいが、それは無視した。
「なんか鳥居をね、血で書くといいらしいよ」
カルトマニアのKが言う。
Kは所謂、みえる人だ。
Jが血で鳥居を書いて、準備は終わった。

続く