[写真に写る女]

女子大生のA子さんが、仲の良い友人と旅行をして、名所である滝の前で写真を撮った。
旅行から帰り、現像に出して返ってきた写真を見て、A子さんは顔をしかめた。
滝を背にしてA子さんが写っている背後にもう1人誰かが写っていた。
暗い色のスーツを着た年齢不祥の女性が背を向けている。
そんな人物が近くにいた記憶は無かったが、
それよりもA子さんが顔をしかめたのは、その人物に首が無いように見えた事だった。
猫背の上にひどくうつむいて、まるでそれが首が欠けている様に見えた。
友人も「心霊写真かもしれない」などと気味悪がったが、
他の写真には何の異常もないし、そういう事もあるかもしれないと割り切って、
後で整理するつもりで他の写真と一緒にしまい込み、そのままその事は忘れてしまった。。
それから1ヶ月ほど過ぎて、A子さんはまた別の友人達とコンパに参加し、居酒屋で写真を撮った。
現像された写真を見てA子さんはおもわず声をあげた。
A子さん達の背後に暗い色のスーツの女が向こうむきにうつむいており、
女の首が欠けているように見えた。
A子さんの頭の中には1ヶ月前に写した写真の事が浮かび上がってきた。
誰かが背後から自分を覗き込んでくるような気がした・・・。
しかし、一緒に撮った友人達に見せても、
たまたま同じ格好をした女性がたまたま写っただけだという正論が返ってくるばかりだった。
その日、A子さんは一人暮しの自宅で最初の写真を探し出した。
あらためて写真を見るとなんとも言えない違和感を感じた。
写真全体に靄がかかっているようで色彩がにじんでいた。
A子さんは写真をよく調べようと明かりの下で逆さまにしたりひっくりかえたりして、
穴があくほど写真を見つめた。

そして・・・。
・・・A子さんは叫び声をあげると写真を放り出した。
写真はゆっくり床に落ちていった。
その女は首が何処かにいったわけでは決してなかった。
たとえ欠け落ちたにせよ、それはちゃんと写真に写っていた。
あまりに大きくて見えにくかっただけだった。
写真の中からは血走った眼が大写しになって、
いっぱいにかっと見開かれて睨みつけていたのである・・・。

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