[一cm先]

高校のとき、市内で当時まだ行ったことない港湾地域を自転車で散策した。
夕方も過ぎ、日もそろそろ落ちようというところ

港湾地区の一つ一つの道の直線距離は長いのだが、
両脇を5mほどのコンクリの壁に挟まれ 入り組んだ経路になっている  
適当に奥へ奥へ行くほどに自分の位置が分からなくなった
自分の向いている方角も分からなくなった
初めはそれが楽しくもあったのだが・・・

街灯がないので周りがみるみる闇に囲まれてきた
知覚できるものが海風の音だけになった
「早く帰らねば!」
少し焦った私は半ばやけになって、真っ暗闇のなかで方角不明なので
帰りの道筋もわからないまま、自転車を立ちこぎし、猛スピードで走り始めた

どのくらいシャカリキにこぎ続けたろうか・・・
まったくどこを走っているのか分からない
次第に足が疲労で引きつってくる 
西村知美状態  「もう限界だ・・・ハァハァ」
力いっぱい急ブレーキを掛け、その場で倒れるように自転車から降りた
自分の呼吸と激しい鼓動から回復しようとその場にへたりこんだ
あたり一面真っ暗

やがて、ひたひたと優しい音がするのに気付いた
私は足元を見ていた 動機が次第に収まり、闇にも目が慣れてきた
私は私の足元が時折キラキラ光ることに気が付いた

なんと、私のつま先の1cm先は海面であった
港の突出したその端に来ていたのだ。
守護霊というものなのだろうか、感謝の先もわからなかったが、感謝した
98 名前:マサノ>>66
私の父にも同じような話
紀伊半島の山脈の中を独りで縦走していた時、日も暮れ真っ暗になった山中を
懐中電灯一本でひたすら寝場所を探して長い間彷徨ってたそうな、

それまで、ずーっと正面ばかりを照らして歩いていたらしいのだが・・
ふと・・何気に足元を照らすと断崖絶壁になっていて
あと一歩で谷底まで落ちるところだったらしい
やはりこれも守護霊の知らせだろうか・・

次の話

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