[ハトコ話]

おれのハトコがいわゆる見える人なんだが、そいつの話をしようと思う。


これはうちの母親から聞いた話。
小四のころ、よくハトコは学校から家へまっすぐ帰らず、寄り道をして友達と遊んでから帰った。
当然帰りは遅くなり、母親に叱られて、家の蔵に閉じ込められてしまったそうだ。
しばらくするとハトコの泣きわめく声がする。家に聞こえるほどだったらしいが、母親は出さなかった。
でも、騒ぎを聞き付けた隣のじいちゃんがハトコを倉から出してくれた。
そのハトコの様子はひどいものだったらしい。蔵の二階から落ちたらしく顔や足に怪我を負い、泣きわめき、嘔吐をする。そして極めつけは手形だった。
ハトコの腕、足にくっきりと手形があったそうだ。背中にも。
ハトコの家は家族仲が悪かった。
そのため、というか普通に考えれば虐待の疑いがあるということで、公共機関も乗り出してきたらしいが、
そんなこともなく、蔵にハトコ以外の誰かがいた痕跡があるわけでもなく(警察にも来てもらったらしい)、それにハトコは蔵で何があったのか絶対に言わなかった。
今も謎のままで、聞いても教えてくれない。


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