[ともだち]
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『危ないよ!!』
10何度目かのもやとの遭遇中に突然俺の頭上から声がした。
女の子の声だった。俺よりも若い、子供みたいな。

『禍々しい、そいつ(もやのこと)はこれから質問してくるよ、間違えたら×××だよ(何て言ってたか忘れた;)』
「嫌だ…!助けて!!」
『私はアリス、彼の質問の答えを私が言うから、繰り返して、いい?』
夢俺の頭の中に亜理子、という字が浮かんだ。これでアリス?不思議な名前だ。

「怖い?」
男の声がした。もやだ、と気付いたとき夢俺の背中がすうっと冷えた。
『怖くない、お前は××だ、いない(なんていってたか(ry)』
「こ、怖くない、お前は××だ、いない」

凄く引っかかる質問だった気がする。
7.8個質問をしてはアリスなる者も意味の解らないことを返した。
何を言ってたのかは覚えていない。最初と最後だけをなぜか覚えている。
ただ、アリスに言われた通り返すとなんていうかな、もやの何かがしぼんだ。
恐怖感と言うか禍々しい感じが。だから俺は全面的に信じちまったんだよ。アリスを。

「私は?」
大分怖くなくなったもやが言った。なんとなくこれが最後の質問だとわかった。

『あなたと、ともだち』
「あなたとともだち」
ぶわ、っと全身の毛が逆立った。萎んでいた恐怖感が急激に膨張した感じだった。
にいいい、口も無いのにもやの口が耳元まで裂ける様に笑った気がした。
怖い、怖いとか言うレベルじゃなかった。

『あ、な、た、と、と、も、だ、ち』
もやとアリスが同時に言った。ああ。もやとアリスはイコールだったんだ。決して助けに来たんじゃな――――

夢俺絶叫。絶叫って多分ああいうののことを言うんだと思う。
慌てて階下のダイニングに駆け込む。
そこでは母親がキョトンとした顔でサンドイッチを作っていた。おはよう、と笑いながら。

「母さん、怖い、怖い夢見た!!」
「へえ」
「あのな、もやが、違うアリスっていう違うなええと」
「風邪ひいてたからでしょ」
「違うんだって!ちゃんと聞いてくれよ母さん!!!」
母親は怖い話ばかり読んで怖い目にあったと言うのやめてくれる、みたいな。
なんか自業自得と言うか、まあ、とにかくサンドイッチ作りを優先していた。
とにかくあまり親身になって聞いてくれない母親に向かってたった今夢の中で見たことを勝手に話す夢俺。

「あ、な、た、と、と、も、だ、ち、って言ったんだよおお!!!」
其処まで話すと母親はしかめっ面をした。気味が悪い夢だね、とでもいうように。
半分泣きそうになってる夢俺。怖い話ってさ、誰かに気味悪がってもらえるとなんか安心しない?
信じてもらえたっつうか恐怖が薄らぐ感じ。
母親は夢俺の背後にある冷蔵庫にレタスをとりに行きがてら夢俺の頭を撫でた。
安心して泣き出すおれ。今年18歳。
とりあえず塩をかけてもらおうと背後で背を向けてレタスを探してるはずの母親の方を振り向いた。

絶句した。

続く