[モノリス]

ナース時代の話。
当直も終わりかけの早朝6時ごろ,仕事が一段落したのでトイレに行こうとした。
職員用トイレは病室と反対方向の廊下にあり,突き当たりは中央材料室だったが途中でベランダに出られるように枝分かれした短い廊下があった。
突き当たりの中央材料室のガラスを見ながらトイレに向かって歩いていると,前方上方に何かが見える。
「ん?」と思うのと同時に妙な胸騒ぎがして,手前にあるEVホールに一旦入り込んだ。
まだ材料室の職員は来ていないし,電気はついていないものの朝の光がベランダから差し込んでてよく見渡せる。
しかし材料室手前のベランダに行ける廊下の曲がり角の上に(天井から20pくらい下)に,真っ黒の丸いものが見えた。
モノリスのように真っ黒で立体感は全く感じられなかった。
「気のせいだよね…」と気を取り直して,EVホールから顔だけを廊下にひょいと出して見ると,
やはり黒い物体はそこにある。「なんだろう?」と目を凝らしていると,その物体はすーっとベランダ側の廊下に消えていった。
何か設備の一部を見間違えたと思っていた私は,動いたことによってそれはそれではなく,動く何か別なものであることがわかり,
一気に恐怖が押し寄せてきた。
そこが病院であることも忘れて「きゃーーーーー!」と叫んでしまい,動ける患者さんたちが何ごとかと集まってきた。
事情を話すと,男性の患者さんが「俺が廊下を見てきてやる」と言って見に行ってくれましたが,なにも見あたりません。
それ以降,そんな経験もないし,あの黒い物体がなんだったのかを説明できるものもありません。
今だに,あれはなんだったのかなぁ〜?と不思議に思う出来事です。
長文,失礼しました。


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