[同じ女の子]
二年前の初秋の話。 
自分はあまり夜遊びするタイプじゃないんだが、その日は友達のバンドのライブを見に行って、終わったのがだいたい22時前。自転車でのんびりと涼しくなり始めた空気を楽しみながら帰っているところだった。 
        
ライブハウスからさほど離れていないところに女子校がある。その女子校の数年前に改装したばかりの綺麗な体育館からきゃーっという遊んでるみたいな女の子の声が聞こえた。反射的に自転車を止め、体育館の方を見た。 
        
二階…というかちょっとした応援席みたいになってるところに制服の女の子たちがずらりと座っていた。 
(あぁ、なんか行事でもやってんのかな) 
そう思って通り過ぎようとしたが何かがおかしい。待てよ、何の音もしていないぞ… 
俺はもう一度女の子たちを見た。彼女たちの外見はとてもよく似ていて…いや…… 
        
同じ女の子だ。同じ女の子が応援席の端から端までびっしりと並んで行儀よく座っていた…それに気付いた瞬間、彼女たちは俺に向かって軽く右手をあげ、ひらひらと振ってみせた。 
        
俺は息を飲み慌てて自転車に乗り、その場を離れた。彼女たちのスカートはいまどきの子たちには珍しい規定の長さだった。 
        
それがなんだったのかは俺には判らない。