[深夜放送 後日談]

まとめサイトの方で”深夜放送”なるカッコ良いタイトルをつけてもらったあの話には、実は後日談がある。

二学期、三学期と何度も体育館で授業は行われていたが、あれ以来、奇怪な放送をを聞く事も、聞いたという噂もなかった。
当時はまだ先生達のやらせという疑いもあったし、あの場に視覚的に見える形で幽霊が現われたわけでもない。
あの場にいた連中…すくなくとも俺、N、Oの三人組は、日々の生活の中であの深夜放送事件の事を忘れていた。
が、あの場にいた連中の多くは、友人や親、兄弟などにあの事件の事を話していた。それは学校の中で俄かな噂になっていたようだ。

三月初旬、卒業式の前日。最後の清掃と会場設営に狩り出された我々のクラスは不満を垂れながらも作業を続けていた。
作業は予定通りに進行していたはずだった。その日は早朝から分厚い雨雲が空を覆い、正午前だというのにやけに暗かった。
いつもは窓からの光源で十分な視界が確保できるステージ裏は夜のようで、ステージ地下通路に至っては真っ暗だった。
俺は何か不気味な焦燥感を覚えながらも、真面目に椅子運び作業をしていた。
すると突然、ステージ裏から悲鳴が聞こえたきた。すぐに駆けつけると、そこには腰を抜かし、涙を浮かべた女子生徒の姿があった。
「あそこに沢山の人影が動いてるのが見えたの!」と訴える女子生徒。
普段、ウソをついたりオカルト地味た趣味にはまっている様子もなく、むしろ委員長系だった彼女の取り乱しように俺はビビった。
見ると、彼女が指差しているのは明り取りの窓だった。
その窓は外から見ると2メートル以上の高さにあるため、沢山の”誰か”が動く事は普通に考えて無理なはずだった。
俺が唖然としていると野次馬達と共に先生が入ってきた。パニックを起こした彼女を保健室に連れて行くから、
代わって俺がその場所の掃除をしろというのだ。

その後に至ってようやく深夜放送事件を思い出した俺だったが、先生は担任ではない怖い人。
幽霊よりもその先生を恐れていた俺は怖いながらも掃除を始めた。しばらくしてNとOもやってきて話をしながら掃除を始めた。
三人で話しながら掃除すれば何も起こるはずは無い・・・それがNの考えだった。だがそれはあまりに甘い考えだったらしい。
数分後、通路の中から何かが崩れるような音が聞こえた。そこには用途不明の大量のダンボールや、椅子の予備が山積みにされていた。
だが、そこは先生達が今日は暗いから危ないという事で入るなと言われていた場所だった。
誰も居ないというのにものが崩れるという事があるだろうか・・・?
深夜放送事件と関係あるかもしれない・・・そんな子供地味た好奇心で俺達は周りで仕事をしている連中も集め、地下通路への潜入を図った。

結果を先に言えば、俺達はそこに足を踏み入れることは無かった。
突入寸前、俺とNとOが挙げた悲鳴が周囲に大パニックを起こし、先生を呼んでの大事になったからだ。
その後、懐中電灯を持った先生達によって崩れているものはどうでも良いガラクタ。
懐中電灯を持った先生たちの調査の結果、中には幽霊などいなかったという当たり前の結論が出された。
俺達はあの事件のせいで神経質になっており、幻覚を見たのではないか?それが先生の結論だった。

だが三人揃って同じ幻覚など見るものだろうか?
闇の中に赤い目が浮かび上がり、あの時とは違う声で「おまえをくれ」などという声が聞こえたなどという幻覚など・・・


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