[綺麗な音楽]

自分の友人の話。

昔、自分のバンドの曲やらカバーする曲やらを、次のライブにサポートを
頼んだ人に渡さなきゃいけなかったんだって。
その人からテープを預かり、彼は曲を入れ始めた。

カバーする曲を聞きながら、録音してると録音が終わった。
確認のため再生してみると録音したはずの曲が入ってない。

その代わり、ものすごくきれいな音楽がはいっている。

ミュージシャンな彼はその曲を吸い込まれるように聞いたそうだ。
なんだか録音したものが入ってないことなんかどうでもよく思えてきたらしい。

このきれいな、この世のものとは思えない音楽を、どうしても自分のものにしたい。

そう思ってもう一回再生してみたそうだ。

するとどうだろう。
さっきとなんだか違う。でもきれいな音楽だった。

繰り返しているうちに、だんだん気持ち悪い音楽に変わってしまった。
「これはやばい!」とやっと思ったのだろうか。
すぐに近くの神社にもっていったそうだ。

するともうテープを渡した瞬間に

「すごいもの持ってきたね。
 君がきれいだって言ったのは、死者のうめき声だよ。
 聞いてるうちに何を言ってるかわかってきちゃったんだよ。
 だから毎回違うものに聞こえたんだよ。」

彼がきれいだと言った音楽は、本当にこの世のものではなかったそうだ。
それ以来、彼はふと見ると白いものが浮いてるのが見えるそうだ。
それはビルから落ちたり、カーテンの隙間を通ったり色んなところを通ると何回か彼は話す。

そんな彼と別けあって2週間も同じ部屋で一緒にすごした。
出て行く日、そんな話をされて何か持ってきてないかいまだに心配だ…


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