[同乗者]
編集のMは帰宅が深夜になることが多く、通勤に原付を使っていた。 
クラクションを鳴らされる事がなぜか多い。 
ライトもついているし、30キロ平均でしか走っていない。 
「なにしてんだ!」 
「危ないだろ!」 
通り過ぎる車から運転手が罵声を浴びせてくることもしばしば。 
こりゃ「霊」だな。Mはそう思い立って知り合いのツテを頼り、霊能者に原付を見てもらうことにした。 
「いますね。後輪にからまっています。女性です。しかも美人」 
走行中だと、周りからは女性を引きずっているように見えるんです。霊能者はMにそう伝えた。 
捨てた方がいいですよ、とアドバイスされたがMの方にも代わりを買う金がない。 
事故るわけでもないのでMはその原付に乗り続けた。 
        
そしてつい最近。やはり深夜のこと、物凄い形相で警官に止められた。 
「どういうつもりだ!事故ったらどうする!」 
怒鳴られ内心(またか・・・)と思いつつ原付を路肩に止めた。 
「あ、あれ?」 
近寄ってきた警官はきょとんとした顔になった。Mはやれやれとした表情で警官に言った。 
「女の人が引きずられてるの見たんでしょ。もう見えないでしょ?止まると見えないらしいですよ。 
からかってるわけじゃないんだけど、幽霊らしいです」 
しかし警官の返事はこうだった。 
「いや・・・・5人乗りしてるように見えたんだけど・・・・」 
「・・・は?」 
増えていたのだった。