[忘れないよ]
3年ぶりの姉の里帰り。 
久々に見る甥は、なかなか利発そうに成長していた。 
甥は生まれつきある痣のせいで、あまり同年代の友達がいない。 
遊んでやったら、際限がない。 
お守りに疲れたので、適当に話題を振ってみる。 
かごめ かごめ 籠の中の鳥は 
いつ いつ 出やる 
夜明けの番に 鶴と亀が 滑った 
後ろの正面 だぁれ 
        
『知ってるかい?この歌ホントは、子供を殺す歌なんだよ』 
『・・・・・・』 
理解できないのかな?甥は、俺を見つめるだけだ。 
『お腹にいる赤ちゃんを、お母さんが殺す歌なんだよ。怖いでしょ?』 
(・・・あんまり怖がらないな) 
        
『・・・堕胎のこと?うん。怖いよ。』 
『・・・え?堕胎?』 
子供の語彙じゃないぞ。姉ちゃんは、5歳児に何を教えとるんだ。 
『固い棒で赤ちゃんを、ぎゅるぎゅるっとひっかき出すんだよ。 
その後は、色んなゴミと一緒に捨てられちゃうんだ。』 
『その通りだけど・・・、よく知ってるなぁ。』 
『お腹の中でも、耳は聞こえるんだよ。 
すごく痛かったし、すごく怖かったよ。 
今でも思い出すと泣いちゃうんだ。 
ママは、もうボクのことなんて、忘れちゃったみたいだけど。』 
        
甥の身体には、生まれつき傷跡のような痣が無数にあるのだ。