[出してくれ!]

去年の話し。

8階建てのビルの8階フロアに用があって行ったんだけど、帰り時間が閉館(?)間際になっちゃって、エレベーターも止まってた。
だから非常階段で下まで行こうと思ったんだ。
薄ぐらい階段を一人黙々と下りる俺、その日は相当疲れてて、足元ばかり見てたと思う。

ふと気付いて顔を上げる。あれ?俺、今何階に居るんだろう?
大分降りて来た気がするけど…。そう思って見回すが、階層の表示が見当たらない。
それどころか、非常階段の壁は塗り立てみたいに真っ白で、模様一つない。
そんな所に一人突っ立ってると妙に不安になって、早くここから出なきゃという気分になった。

俺は足早に踊場まで下ると、非常ドアを開けた。…はずだった。
開けたドアの先に広がっていたのはフロアではなく、空調整備室だった。

あれ?間違えたか?そう思って、下の階のドアノブを捻るが、今度は鍵が閉まっていて開かない。慌ててまた下の階のドアへ行くがやはり開かない。その下も開かない

閉じ込められた気がして冷や汗が止まらなかった

「ここから出してくれ!」そう心で叫びながら、むちゃくちゃにドアを開けて回った。


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