[まとわり憑く女]前頁

何度引っ叩かれたか分からない程引っ叩かれた記憶がある。家に半べそかき
ながら帰り、親父に言ってSの親父に文句言ってもらおうとしても、うちの親父
はなにもしなかった。逆に「ご面倒お掛けしました」なんて謝ってたくらいだ。
まぁ今となっては多少分かる。Sの親父が言ってた、「つまらんものは拾ってく
るな!」とは、「つまらんもの憑けて来るな!」と言う意味なんだろう。
背中をバシバシ叩かれたのも、俺とSとSのお母さんと3人で「折り紙」と言い
つつもハサミでチョキチョキしながら「やっこさん」、今となって人型だと気づいた
が、それをたくさん作ってたのも全てはS(俺含めて)を守るためだったのかな?
なんて今は思ったりもしている。んなもんだから、信用、信頼はしているが…
なんせ怖い。27にもなって、怖い。

「ただいまー」「ご無沙汰してまーす。」Sと俺、玄関に入る。
「おぅ、そろそろ来る頃だと思ってた。行ったか?おまえんとこに行ったのか?」
と、親父さんがニヤニヤしながら話し出す。
「いつも来てたよ。でもとうとう昨日ホントにきやがった。Tと、飲み屋の女の子
二人巻き込んだ。」
「T君はまぁしゃーないな。女の子は?」おいおい…俺は家族じゃねーよ…
「正直言うとやばい。憑かれたかも…」
「そうか。で、その女の子は?」
「ばっくれた」
「!!馬鹿やろぉ!!なにが「ばっくれた」じゃ!つまらん言葉使いおって!
T!お前もそんな言葉使っているのかぁ!」
怒るとこちがうだろ?と思いつつ、「まぁ、ははは」などと話を逸らす。

昼飯を食べながら、色々な話をした。結局、親父さんの話だとSと俺は昨日
のようなやばい状態には感じられないとの事だった。
さらに言われたことは、早急に女の子二人を連れてくること、引っ越したとこで
Sにしろ、タイ子・エーコにしろ、なんの対策にもならない事だった。
帰りの玄関で靴を履いている最中も親父さんは話し続けた。

「生霊は成仏せんからな。まだこれからも続くだろうよ。主が納得するまで続く
し、納得してもしまいかたが分からん人もいる。そうなると厄介そうだが、実は
そんな厄介ではない。既に害は無いし、他に興味が移れば移るほど自然に
消え行くからな。ただし今回はちがうだろうよ。見てみないとなんとも言えんが、
まぁ、はやく女の子二人を連れて来い!とにかく早く!な。」
「分かった。」「はい分かりました!」Sと俺。

続く