[爺ちゃんの訴え]

母の家は代々霊的なものを感じ取りやすい体質らしく、
爺ちゃんが亡くなった時も母はしばらくうなされたりした。
それらの経験談が余計に「爺ちゃんが来て写真を抜き取った」という考えに説得力を持たせた。

俺は取り合えず寝ることにした。
恐い思いをした筈なのに何だか眠くて堪らなかった。
俺は一通り戦慄すると、部屋に戻って電気を消し、すぐに眠りに付いた。

翌日。試験は難なく終わり、数日後に俺の合格が分かった。

未だに何で写真が無くなったのかが分からないが・・・これには後日談がある。

それから二週間くらいして、俺と母が母方の実家に爺ちゃんを拝みに行った時の事。
母は車の中で口を開いた。
「この間爺ちゃんの夢を見た」
「へー。早く拝みに来いっていう催促じゃね?w」
俺も冗談半分で返したが、様子がおかしい。
「そう思うか」
不謹慎だったかと反省しつつ俺は何があったのか興味があり、訊いた。
母は時々思い出すようにして話し始めた。
「爺ちゃんな、薄暗い所に座ってるんだわ。何だかゴミとか玩具とか?が一杯散乱してる所に。
 そんで、奥に・・・何だろな。何か幕があってな。ホラ、学校の体育館にある感じの奴。
 アレの真っ赤な奴が上に張ってあって、爺ちゃんの座ってるとこの上がそれに囲まれてるの
 そんで何か、正座か体育座りみたいな感じで座って、おれの方をじぃーっと見てくるんだ」
「・・・夢だろ。考え過ぎじゃねーの?」
「かもしれねぇけど、二回も三回も見ればなぁ・・・」
俺もさすがに背筋が寒くなった。母の夢はあることに符合していたから。
実家に到着。扉を開け、仏間に入るとそこは・・・
・・・洗濯物やら玩具やらが散乱してた。部屋の半分くらい。
実家には伯父伯母夫婦と子供二人が居るんだが、整頓されているとは言い難い状況だった。
俺も母も爺ちゃんが亡くなってから何度も見ているのでショックは受けなかったが、母は自分のかつての家の面影が無くなっていくのを寂しがっていた。爺ちゃんが生きている時は綺麗に整頓されていた家だったから。
仏壇には三個入りで、既に一個食べられているプリンが備えてあった。俺も母もそれを見て思わず絶句する。
線香が燃え尽きてから、席を立って母が一言、呟いた。
「夢と同じ・・・」
背筋が再び寒くなるのが分かった。爺ちゃんが寂しそうな目で見つめている気がした。
ごめんなさい、と訳も無く謝りたくなった。


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