[返事してはいけない]
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他の子がみんな帰ったのを確認して、こっそりリネン置き場へ。 
ここは少し変わった作りになっていて、本来なら踊り場があるはずの場所に無理やり扉と仕切りを付けて小部屋にした感じになっています。(分かりにくくてすみません) 
扉のすぐ下は階下へと続く急な階段。 
上に続いている階段部分もベニヤで遮られ、タオルが塞ぐように積まれています。 
空調なんて無いですから暑くてしょうがなかったのですが 
知りたい欲求には勝てず、積まれたシーツを椅子代わりにして声を待ちました。 
何分経ったかは分かりません。暑さで麻痺していたのかも。 
でも、そう長い時間は経ってないと思いますが、聞こえてきました。 
……に……げる 
やった!! 
声の主にすかさず質問します。 
「あのー、なんて言ってるの?」 
……そ…に…し…る 
「ごめーん、もちょっと大きい声でお願いしまーす」 
………に……… 
「あれ、なんかますます聞こえな 
お そ ろ い に し て あ げ る 
聞こえたのは右耳の真横。 
と同時に、体は階段を滑るように落ちてました。 
すごい音がしたらしく、飛んできた店長に発見されて救急車へ乗せられ病院へ。 
右足を複雑骨折、右手首骨折、右肩脱臼、なぜか右耳の鼓膜に穴が開いてました。 
落ちた時の格好が悪かったんだろう、という話になりました。 
その後すぐ、私は店を辞めると同時にこの手の仕事から足を洗ったので 
声やあの場所についての詳細は分かりません。