[強烈な引き]
数年前、会社の後輩と海に夜釣りに行った。 
釣り場に着き、仕掛けを用意している中、後輩(俺の釣りの師匠)は、独りでさっさと良いポイントに行ってしまっていた。いつもの事なのだが。 
……1時間くらい経った頃だろうか。 
投げっぱなしにしていた竿が急にしなり、当たりを知らせる鈴が、静まり返った港に鳴り響く。 
すぐ合わせをして、ヒットを確認、大物との戦いが始まった。こんな引きは初めてだ。 
後輩が気付いて声を掛けてきたが、それどころじゃない。 
海に引きづり込まれそうな勢いだ! 
わっ、わわっ!落ちる!! 
その時後輩が俺の体を掴んでくれて、なんとか助かった。 
後輩が、 
魚かコレ!?違う!!何かヤベェ!! 
と叫び、切ろう、ライン切ろう!!と騒いでいると急に引きが無くなり糸が巻けるようになって、その反動で後ろに転んだ。 
何だったんだ。 
とにかく巻こうということになり、ラインを巻いていると、また強烈な引きが。 
うわー!!とか叫びながらもリールを巻き、もうすぐで見える、何なんだこの引きの正体は!!とか言いながら最後の力を振り絞って巻き続け、後輩がソレに懐中電灯を当てた瞬間、ベタだけど2人でその場からにげた。 
巨大な白い手だった。 
指が、せわしなく動いていた。