[はね回るカンバン]

この話は某コミュニティで一回投稿したものだが、洒落怖にも投稿することにした。
まあ、暇つぶし的な感じで読んでくれ。


俺が中学の頃、野球部の連中から聞いた話だがその中に霊感の強い奴がいて
色々なエピソードを持っていた。夜10時頃そいつがグラウンドを横断して(当時は夜間の
グラウンドを通るのは禁止されていた。自宅に帰途についてたんだが近道なので通っていた
そうだ)で、グラウンドに面していた建物に体育館があった。体育館の一回は部室になっていて
一箇所だけ部室の扉が開いていたんだと。(以降そいつをHと呼ぶことにする)

Hが不審に思って通り間際にあいた扉に接近しながら覗いてみると部室の奥に霊が立っていた
とか。まあそんな感じで”見える奴”ってことで有名だった。当時の野球部の連中は結束が固く
プライベートでもよく一緒に遊んでいた。

ある夏休みの日にキモ試しをやろうということになった。10人から15人ぐらい集まって
(もちろんHも参加)夜11時頃から全員一緒に火葬場まで行って帰ってくる簡単なものだった。
時間になって参加者全員いることを確認してみんな一緒に固まって歩いていたそうだ。
「臭せーなあ」「うわーwマジくせー」参加者の中で声があがった。実は火葬場に行く途中
ゴミ処理するためにゴミをストックしておく倉庫みたいなものがある。ゴミ処理倉庫は
常時扉が無く開放状態だったのでその臭いがモロにくるのだ。

野球部の連中もなんだか興ざめな感じで、中には冗談まで言うやつが出たりして、とても
キモ試しの雰囲気ではなくなったそうだ。早く家に帰ってテレビでも見ようみたいな。
突然、「ガン、ガガン、ガガガン!!」という大きな何かぶつかるような音が鳴りひびいた。

みなその音の鳴る方向へ目を向けた・・・・・「!!!!!」
なんとカンバンみたいなものが踊るようにゴミ処理倉庫の屋根の上を跳ね回っている。
まるで生きているかのように。
「うわーーーーー」全員我先にスタート地点へ走っていった。

スタート地点へ戻ったがみな無言だった。が、誰かが「おい、Hがいねーぞ」という言葉で
再びパニック状態に・・・・・「マジかよ!」「あそこにHが一人でいるのかよ!?」
「もうあそこには戻りたくない・・・・・」

しかし気丈な奴が3人いて「俺らがHを連れてくるから、待ってろ」ということになった。
3人はビビりながらもゴミ処理倉庫へ向かった。倉庫前についたが例のカンバンはもうすでに
消えていて、ホッとしたのか3人は声を出してHを探した。「おーいH」「どこにいるんかー」
いない。いったいどこにいるんだ・・・・・・

倉庫付近にはいないことが判明し、奥の火葬場へ行くことになった。いた・・・・しかし気を
失って倒れている。3人の中の2人がHの脇に体を入れ連れて行くことになった。
しかし、もう1人の奴の様子がおかしい。ガタガタ震えていて泣いている?不審に思ったが
2人ともHを運ぶのに必死でそれどころではなかった。

無事にスタート地点間で戻り、全員の人数を確認した。Hを担いだ2人のうちの一人が
様子がおかしかった奴に「どうしたんや?」と聞くと火葬場の前に上半身だけの男が
じーっとこっちを見ていて、Hを助けるどころか自分で歩いてくのが、せい一杯だったらしい。
その後Hは家まで運ばれて2日学校には来なかった。

登校してきたHから聞いた話しによるとカンバンが跳ね回っていたときに火葬場のほうから
自分を呼ぶ声が聞こえてそちらに向かったとのこと。でもその声の主がすざましい怨霊で
あまりの力に気を失ったとのこと。

「あんなの初めてや。もう二度とあそこへは行かん」


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