[すれ違った人]

そしてしばらくたったある日。
A子さんはニュースで先日の殺人事件が解決したことを知ります。
「これでやっと安心できる」とほっとしつつそのニュースを見ていると、
つかまった犯人の顔が映し出されました。
(どこかで見たことあるな…)
A子さんは犯人の顔にどうしても見覚えがあり、
必死に記憶をたどりました。
そこでA子さんは愕然とします。
あの事件が発覚した日、最初にたずねてきた制服警官こそが、あの犯人だったのです。
印象は違えど、確かに同じ顔。
A子さんは何が何だかさっぱり分からず、ただ呆然とするばかりでした。

A子さんはとりあえず、署にあの日最初に自分の部屋に訪ねてきた
警官について問い合わせましたが、制服の警官をよこした事実はない、との事でした。
A子さんはさらに混乱したのですが、何とか落ち着いて次のような結論を出しました。

・あの夜玄関で見た、帽子の人物こそが犯人だった。
・犯人は、姿を見られたことであせり、とりあえずポストでA子の部屋番号を確認した。
・事件が発覚し、自分のことを警察に言われることを恐れた犯人は、
警察より先回りして、A子の元へ行き、自分のことを覚えているか、確認した。

ここまで考えて、A子さんは、こんどこそ恐怖におびえました。
もしあの時、帽子の人物について正直に証言していたら…

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