[バケモンとドア]

高校時代の友人が体験した話。
仮に佐藤とする。佐藤は隣県から僕の地元の高校に通学していた。仲は良かったが、あまり自分のことを話さない性格だったのでよくわからない奴だった。
2年の夏休みに佐藤は、佐藤の地元の友人たちとバーベキューをやったらしい。佐藤の地元はド田舎で田んぼと川くらいしかなく民家も所々にかたまってあるくらいだ。

6人ほど集まって原チャリで食材などを「機場」という場所に運ぶ。「機場」とは川の水を汲み上げて田んぼに供給するための一辺10メートルほどのコンクリート製の施設だ。
そこは民家から相当離れていて夜中騒いでもわからない場所らしい。
夜の12時を回りバーベキューも一段落し、みんなで機場の屋根に登り、寝そべりながら話をする。

ふと佐藤が気が付くとお調子者の田中(仮)がまったく話しに入ってこない。佐藤は「これはまずい」と思ったらしい。
田中は所謂霊感があり、いつもはふざけているが、何かを感じると別人のようになる。突然、田中が「ヤバい」とぼそっと溢す。周りがどうヤバい?と聞くと「幽霊とかじゃない。バケモノだ・・・」と言う。

すると一人が「あれ・・・」と指を差す。その先には人が一人。何故かその人が暗いのによく見えた気がしたらしい。その人はボロ布のような服を着ていて、何故か鳥(?)を持っていて立ったりしゃがんだりしている。
佐藤や友人たちが何も喋れずにいると強烈な耳鳴りが。これは田中が何かを感じると、周りの人に耳鳴りがするためらしい。
佐藤も今までに感じたことないくらい強烈な耳鳴りだったのでヤバさが尋常ではないとわかったらしい。

見ているといつの間にかボロ布の人の周りにモヤがかかっている。それは段々形になっていきもう一人が完成する。しかし人ではなかった。
角がある。羊?山羊?よくわからないがクルクルと曲がっている大きな角だ。ボロ布と角が話をするかのように距離をとって向かい合っている。
佐藤は冷や汗が止まらず、唾が何倍にも濃縮されたように口が苦くなっていく。
すると突然、ジェットコースターに乗ったときのような内蔵がフワっと浮く感覚と、次に頭に空気の矢が貫通する感覚に襲われた。
ボロ布がこっちを見ていたのだ。

そこから記憶がないらしい。気が付くと朝の5時になっていてみんな機場の屋根の上で寝そべっていた。
みんなぼーっとして何も喋らない。佐藤は腕に痛みを感じ見てみると五百円玉くらいの火傷をしていた。バーベキューのときの物ではない。するとみんなも腕に火傷をしていた。
訳が分からないので全員一旦、家に帰った。佐藤は風呂に入りながら考えたらしいが何が何だかわからない。数時間後、田中が佐藤の家に迎えにきて友人たちの溜り場へと向かった。

溜り場にはもうみんな揃っていた。佐藤が田中にアレはなんだったんだ?と聞いた。「アレは絶対に幽霊じゃない。そもそもジャンルというかスケールが違う。デカいんだ。わかんないけど、バケモノだよ」
そんな話をしているとき一人が「アレ?アレ?」と目を擦る。「ヤバい。なんか変なものが見える。ゴミかな?」すると別の奴が「………俺も。」
他も他も、全員が見える。目を凝らすと頭の上にいくつもドアが見える。そのドアを開けようとイメージしても開かなかったらしい。
佐藤たちは夜のこと、ドアのことは誰にも言わないということにした。
数日後、ある一人が佐藤たちを呼び出した。ドアが開いたと言うのだ。曰く、「知り合いとトランプをしたら相手のドアがちょっと開いてどんなカードを持ってるかわかった」とのこと。その後佐藤もバイトの店長にトランプを持ちかけドアが開いたという。
今だにさっぱりわからないが、僕自身も佐藤を通して色々と体験している。


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