[はかし〜]

 今日の夜中3時くらいに目が覚めて、起き上がろうとして手を布団から出した瞬間、
「たかし(たかはし?)〜たかし〜いないの〜?」
 と聞こえてきた。
 出した手を引っ込めたいんだがそのとき音がしたら見つかるかもしれないのでそのまま制止した。
「たかし〜(やっぱりたかはしにも聞こえる)たかし〜いないの〜?」
 声は途切れることなくたかしだかたかはしを呼び続けている。
 僕はたかしでもないしたかはしでもない。
「たかし〜たかし〜(もしかしたら「たかはしたかし」なのかもしれない)いないの〜?」
 やたらしつこい。
「誰もいないの〜?」
 声はそこで途切れた。
 耳を済ますと車の音がする。どうやら悪い夢から覚めたようだ。
 そう思い、手を動かした瞬間、何者かに手を掴まれた!
 僕は必死で叫び、もがき、近くにあったペンで僕を掴んでいる者を刺した。
 凄まじい叫び声がして気配が消えた。
 翌朝、明かりをつけてみると、血が滴り落ちている。
 それを辿っていくと、庭に大きな大きな古狸の死体があったとさ。


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