[雨の中の団体]
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僕「さっきトイレ入った時は雨降ってたよ?それに団体で来てる人もいたし」
「M(僕)くん。今日は団体で来る予定はないんだがの?」
そして、おじいさんはこう続けました。
「…トイレで見たんじゃな?」
僕「はい。そのお客さんの1人がこっち向いたんで、すぐ引っ込みましたけど」
「どんな人じゃった?」
僕「傘に隠れて分かりませんでした。でも足がこっち向いてたんで…」
「そうか」

それから僕たちはお墓に行き、お参りやら掃除やらを済ませ、またお寺に戻ってきました。
その間、団体さんには会いませんでした。
「Mくん。ちょっと来てくれるかの?」
おじいさんに板張りの大広間につれていかれました。
「せっかく来たんじゃから、お土産を渡さねばの」
僕に透明な…正月にIがくれたビー玉のような御守りでできた数珠をくれました。
「しばらくは持ち歩きなさい」
僕はおじいさんにお礼を言って、部屋を出ようとしました。
…その時初めて気づきました。
なぜ家族は雨のことを知らなかったのか。
なぜおじいさんがいろいろ聞いてきたのか。
なぜ御守りをくれたのか。

最後です
正月に僕と彼女は、このビー玉のお陰で命拾いしたことがあります。
急いでトイレに向かいました。

ドアを開けると、トイレは真っ暗でした。
板がきれいに打ちつけられ、小窓が完全に塞がれていたからです。
唖然として突っ立っていると、後ろにいつの間にかおじいさんが立っていました。
おじいさんはこちらを見てニコッと微笑みました。


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