[日本兵に・・]

会社の飲み会で趣味の話になって、派遣の姐さんが語ってくれたこと。

派遣の姐さんは、以前、スキューバダイビングにはまっていた。
装備一式自前で揃えてライセンスも取って、毎年、夏の休暇にはグァムに潜りに行っていた。
ある年、人数の都合で新婚旅行の超初心者4人(新婚さん2組)と
ライセンス持ち3人(派遣の姐さん含む)とインストラクター達で船でダイビングスポットに行った。

調子よく潜っていて、上から珊瑚を見たくて、ちょっと浮上しようとした時、誰かに足首を掴まれた。
「え?!」
と、思って足を見ても何もない。海草がからまったわけでもないのに、浮上できない。
足首には確かに、誰かに掴まれているような感触がある。
大人の男性っぽい、無骨な手の感触がダイビングスーツ越しに伝わっている。

必死でじたばたしていたら、初心者に付き添っていたインストラクターが気付いて、
身振りで他のインストラクターとライセンス持ちを呼び寄せて、手伝ってくれたので
何とか船に揚がることができた。

「…それから、一回も、どこにも潜りに行ってないねん。装備も実家の物置につっこんだまんま。」
「もったいな〜。それ、潜水病ちゃうの?」
「ちゃいますって!!エアも充分残っとったし、初心者と同じ深さしか行ってませんし!
 足掴まれてる間、ずっと、兵隊さんッぽい声って言うか、気持ちって言うか、
『何か』が頭の中に響いてるって言うか、伝わってる感じがして…」
課長の突っ込みに涙目で力説する派遣の姐さん。
「そっか…グァムやしなぁ…」
「うん、私、霊感とかないけど、あれ絶対、足掴んだん日本兵やったって!!」


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