[触れてはいけないモノ]
前頁

A男は馬から飛び降りて、再び人形を手に持ち、また俺たちに投げてきた。
たぶん自分でもやばいと思ったんだろう。その気持ちを誤魔化すかのように
静かになったその部屋で、半笑いで人形や本を投げつけてきた。
A男以外、誰も言葉を交わさない。引きつった顔で人形と本から逃げまくる俺達。
B男『それ、やべーから元に戻せって!』
他『うん、うん』
ついにB男が口を開いて、それらを元の位置に戻すように提案した。
A男もすぐに元に戻すことに賛成した。
A男は人形と御札と本を拾い、軽く埃を払ってごめんと呟いて天井裏の元の位置に戻した。
テンションも下がり、就寝時間も近かったためみんな各自の部屋に戻っていった。
俺は隣の部屋、A男はさっきまで遊んでいたあの人形のあった部屋だ。
すぐに消灯時間は過ぎ、先生達が見回って部屋の電気を消させた。
部屋の入口のドアは少し開けられていて廊下の明かりが差し込む。
たぶん、しゃべったりしてる生徒を見つけやすいようにしたんだろう。
先生達が廊下をパタッパタッと行ったり来たりする足音が聞こえる。
廊下の明かりと先生達が見守ってくれているという安心感からか、先ほどの人形の出来事を
忘れてすんなり眠りにつけそうだ。
パタッ・・・パタッ・・・パタッ・・・パタッ・・・パタッ。
先生の足音を聞いているうちにウトウトし始めて俺は深い眠りについた。
寝始めてどれくらい時間がたったのだろうか。『ドンッ!』と地響きのような音でハッと目が覚めた。
夢かと思ってドキドキしながら2回目の音が聞こえるのを息を殺して待っていた。
おそらく同室の連中もそうだったに違いない。
すぐに『ドンッ!ドンッ!』と1回目と同じくらい大きな音が鳴り響いた。それと動じに叫び声が聞こえる。

ドンッという音と叫び声は、どうやら隣の部屋からのようだ。
廊下からS先生の『どうしたっ!』っという声とA男の叫び声のような物が聞こえてくる。
俺たちはあわてて部屋を出て、隣の部屋に駆け込んだ。
部屋の中はすごい光景だった。
A男が目をちばらせ壁に向かって手足を振り回してた。
まるで壁から出てくる何かに必死で抵抗しているように見えた。
A男『やめろー!くるな!くるな!』
S先生『おいっA!しっかりしろ!』
A男『手が!手が!手が!壁から手がーーーーーーーっ!』
すぐに他の先生達が駆けつけ、A男を取り押さえた。
A男は押さえつけられながらも叫びながら必死で何かに抵抗していた。
見ている俺らも怖くなるぐらい暴れ叫んでいた。
S先生『おいっ!救急車を呼べっ!』
誰が救急車を呼んだのか知らないが、すぐに救急隊員がタンカを持って入ってきた。
タンカに載せられて縛られてもA男は暴れ続け失禁までしていた。
そのまま救急車で運ばれていってしまった。

続く