[がらくたの中の不気味な顔]

小学生の時の話です。

その時私が住んでいたのは、所謂「廃〜」が非常に多い場所でした。
廃工場、廃校、廃病院・・・など、使われていない施設です。
無論、学校や親などからは、そこには近付かないように言われていましたが、
それは浮浪者などの、現実的な危険が多いが為でした。

ただ、そこで、現実的ではない怪奇な体験を、一度だけした事があります。
いまではその場所がどうなっているのかは知らないですが、
あの場所へは、私が死ぬまで行く事は無いと思います。

使われていない施設・・・「廃〜」とは言っても、
その多くは道路に面してはいましたし、外灯もありましたので、
そこまで怖い場所と言うほどでもなかったです。
ただ、夜になると、やはり雰囲気は違うと思います。
(私は行った事が無いので分かりませんが・・・)

その体験をしたのは、ある日の下校途中の事でした。
小雨と言うには少し激しい雨の中、
私は友人と別れ、一人で帰路についていました。
数ある廃施設は、私の通学路にも幾つかありまして、
その近くを毎日通っていたのですが、
巨大なガラクタ置き場とでも言うのでしょうか、
機械系のゴミがいくつも重ねられている場所があります。

天気は雨でしたので、昼でも暗かったと記憶しています。
だからなのか、いつもは目に止まる事など無いはずの、
ガラクタ置き場の方に自然と目が行っていました。
なぜなら、そこに光る何かを見つけたからです。

好奇心が旺盛だった私は、
そのガラクタの山に近付いていきました。
そこで光っていた物・・・

テレビでした。
カラフルなノイズ?が規則正しく揺れていました。

ありえませんでした。
通常「壊れて、もう使えない」物がそこに捨てられているのに、
そのテレビは点灯していたのですから。
しばらく動けないでいた私の心を脅かすかのように、
「ブツン」という大きい音と共にテレビは消えました。
多少ビックリしましたが、漸く「早く帰ろう」と思いました。
その時です。

テレビに凶悪な笑みをした、
黄色い顔が浮かんだのです。

雨が降っているのも関わらず、私は尻もちをついてしまいました。
顔はおそらく男で、非常に気味が悪く、
何度も何度も歪んでは元に戻り、という動作を繰り返していました。
灰色のガラクタに鮮やかな黄色の顔。
そのコントラストが非常に不気味でした。

私はもう半泣きで、
ひゅうひゅうと速い息をする事しかできませんでしたが、
ガラクタの後ろ側で、ガタガタと何かの音がした時、
それが何かの合図のように、私は傘をその場に捨て、猛然と走りました。

途中何度も転び、やっとの事で家に帰ったときには、
足をすりむき、血だらけだったのを覚えています。
親はビックリしていましたが、私の話は信じてもらえませんでした。

そんな事があってからも、
卒業するまではその通学路を通り続けましたが、
あのガラクタ置き場には絶対に目を向けませんでした。


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