[潜むもの]

オレの仕事が、住宅工事の現場監督だったころの話。
まだ、若造で現場監督といっても、新卒で名ばかりの監督だった。
現場の職人さんは丁度親爺くらいの年齢でとても面倒見がよかった。
そんなある日、台風かなんかでエライ雨風の強かった日、
まだ屋根が上がったばかりの現場で、心配だったオレは
事務所で工程表などの調整が終わり帰りがけにその現場に
寄っていくことにした。夜の9時くらいだったと思う。
その現場は、まだ分譲したてで、周囲には民家もなく、
他の住宅メーカーの建設途中の家がいくつかあるだけの場所で
街灯もその住宅集合地に1本薄明かりが立っているだけだった。
そんな中、建設途中の家の中に水漏れ等がないか懐中電灯で
点検している最中、雨と風の音に混じって家の中から
なにかゴソゴソ音がする。
「ホームレスかな?(怒)」と思ったら
隣にあった、仮の水道管からスプリンクラーのように
水がブシュ〜ッ!プラス「アァァァァァ…」で声。
もうバカかと。アホかと。
ダッシュで外に飛び出して車の中でガクブル(((;゜д゜)))
数分後…本当にホームレスだったりしたら下っ端のため
会社の上司や職人にどやされるな…(実績はまったくないが
名目は現場監督なので現場の責任はオレにある)
勇気を出して再度突入!

今度は玄関じゃなく、勝手口からまわってやろうと思い、
雨が45度斜めに降る中、恐る恐る裏にまわる…
その時、床下換気口(家の基礎についてる通気用の小窓)
からヌゥっと手が出てきた。
情けないことにオレは腰が抜けて動けない
そのうちその手がどんどん出てきて、頭、胸、体…と貞子のように
這って出てくる…。正直「あぁオレの人生ここで終わりだ…」
って思って、もう覚悟してたのよ。
その影はゆっくりと立ち上がり「ヌアァァァァ」と声を上げた。
そのシルエットは鬼?みたいにガタイがよくて
頭はボッサボサで風にゆれて落武者見たくなってる。
オレは動けない体を、なんとか動かし必死に車まで帰ろうとした。
その影はゆっくりと俺に近づいてくる。
なんとか車へ逃げ込み急いでエンジンをかけようとしたら
ソイツが車の5m位前に立ってンの(((;゜д゜)))
突っ込め!と思いアクセルベタ踏みでソイツに向かって
突っ込んでいく。
ソイツはヒラッと身をかわしたんだが車のミラーあたりに
ぶつかり視界から消えた。(感触はあった)
なぜがやっつけた…って感じがしてしばらく放心状態だったが
「ホームレスだったらオレやばいな…」
とおもい外に出て確認しようとした。
ふと、車のノブに手を当てた瞬間、運転席の窓にソイツがバンッ
と張り付いてきた。
「ギャdfbギhdfcンvl」
声にならない声を叫びハンドルに頭をかかえてふさぎこむ。
深夜の工事現場に長々とクラクションの音が響いた。
次の瞬間、助手席のドアがひらいてソイツが乗り込んできた。
必死で車を降りようとしたがドアが開かない(運転席は施錠していたw)
あたまの中は「サヨウナラ、ミンナ サヨウナラ…」と繰り返していた。

助手席にのりこんだソイツに目を向けると
なんと!水道屋さんの親方でしたww
ちなみにスゴイがたいがいい人で
いつもはキャップをかぶっていたんです。
そのとき気付いたんですが、見事なバーコートハゲで
それが、強風でボワオワと舞っていたんですねw
親方曰く、その親方も新米のオレの為に、台風対策をしていたそうで
他の現場が終わってから、その現場の点検に来ていたそうです。
床下に潜っていたら、家の中を誰かが歩く音がしたそうで
オレとおなじくホームレスだと思ったらしく撃退のため
配管からスプリングラー攻撃をしたそうです。
そして、作業が終わり点検口からでたところ
狭い穴からムリクリ出てきたため、腰がツって一言、
「ヌアァァァァ…」
すると、誰かが走って逃げていったので追いかけると
オレの車だったそうで、おつかれさんって近づいていったら
急発進、幸いにも車に当たったのは親方の腰袋でした。
でも転んでしまい、イタタタと車の運転席がわに捕まって
起きあがったところ、オレが「ギャdfbギhdfcンvl…」
鳴り響くクラクションの中全てを察した親方は
とりあえず、雨の当たらない助手席に乗った。
というオチですwww
当時のオレには死ぬ程洒落にならん出来事でしたw
当然、しばらく現場の一服の話題は、このネタで盛り上がりました


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