[睨む兄]

私に霊感はないんだけど子供の頃からちょくちょく
不思議現象にあってます。これは5年ほど前の話なんですが…
蒸し暑い夏の宵の口、仕事で疲れてたせいで
ついベッドでうとうとしてました。
その時夢を見ていて、私は「お兄ちゃんがかわいそうだ〜」といって
泣いていました。黒い喪服を着た、三列くらいの長い弔問者達は
母も含め皆うつむいていました。先頭の棺の中はどうやら兄の遺体が
収まっている様子。私はなぜか胸が張り裂けんばかりに悲しくなって
自分の嗚咽で目が覚めました。すると背後から黒い影のようなものが
むくむくと立ち上がってきて、その気配に驚いて振り返ってみると
敷居のあたりから湧き上がった黒い影が、人の形のようになっていました。
そしてその瞬間、私は体が一気に冷えて固まりました。

影が胸の辺りまで湧き上がってきた時、その黒い顔に突如目が現われ、
鋭く、こちらを睨んでいました。しかしよく観ると兄の顔だったのです。
そして地を這う様な低い声で私に言うのです
「己の守るもの…」そういうと黒の塊はまた融け始め、消えていきました。
で、そこで本当に目が覚めたのです。はっと目を開けて
さっき兄が沸いてきた敷居のあたりを見たのですが、もちろん何もなく、
ただ私は汗びっしょりでした。出てきたのが兄だったのでさほど恐怖心は無く
なーんか兄にあったんかなー?と思っていただけでした。
そのときは兄は同居して一階に部屋があったので、なんかあったら母が騒いでる
だろうし。で、その翌日。そういえば最近は兄と顔をあわせてなかったので
母に「お兄ちゃんどした?」てきくと「お兄ちゃん結婚するっていってでてったよ」と
「えー知らなかった」まじにぜんぜん聞いてなかったのでびっくりしてそういうと
「前から考えてたみたいだけど公務員官舎が空くから入籍して引っ越すみたい」
とのこと。奥さんはおとなしい人で披露宴とかはしたくなかったで、挙式は
二人で海外でというプランにしたらしい。
あの夢は兄が家族から遠ざかるからみたのでしょうか?泣いていたのは
妹の私に何も言ってくれなかったからなのかな?よく解りません。
でもあの私を睨む兄の目は今でもはっきり思い出せます。


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