[50年前は・・]
前にバイトしてたコンビニの奴の話だけど・・・ 
コンビニでそういう恐怖系の話題になる奴なんて、 
大抵気違い系の人物が定番なんだろうけど、そいつはめちゃイケメンだった。 
しかも髪の毛は染めない、アクセサリーも付けない、 
普通にしてて尚、男の俺たちから見ても格好良かった。 
ただ、そいつは女を避けまくる奴で、俺たちとは普通に喋るのに、 
女が話し掛けても相槌を打つくらいでほとんど無視。結構可愛い事画でも関係無しに・・・ 
決して無愛想ではないんだけど、『最低限の事しか話さない』という感じ。 
内心何でだよ・・・orzとか思ってた。俺は自他共に認めるぶちゃいくだからね。 
そしてある時そいつと喋っていたのだが、 
悪評の立っていたチャラチャラした女が話し掛けてきた。 
女に話し掛けられたそいつは、やはり最低限の話しかしなかった。 
しかし女が違う場所に言った後、 
「50年前はこんな・・・じゃなかった」と呟いて、 
そいつは去っていく女をものすごい鋭い目で見ていた。 
「・・・」のところは聞き取れなかったが、余りの冷たい瞳に、 
驚いた俺が何も言えずに居ると、「帰ろうぜ」と言ってくれた。 
またある時、コンビニの周りにたむろしていたガラの悪い奴らがいて、 
夜なのに大声で騒ぐ、用も無いのに店と外を往復する、 
挙句買わない雑誌を外に持ち出して読む奴も居た。 
奴ら曰く「後で戻すんだからいいだろ」らしい。はぁ。 
そいつ(黒髪のイケメンね)が忘れ物を取りに戻ってきたのが、 
たむろしてる奴らが来て1時間ぐらいだったかな。 
外に居る奴らのことを俺が話したんだよ。そしたら、 
「ああ、あれかぁ・・・50年前はなぁ・・・」といいながら複数居るそいつらに向かって行った。 
ガラの悪い奴らと黒髪のイケメンはしばらくの間何かを話していたが、 
先に折れたのはガラの悪い奴らだった。何故か黒髪のイケメンに向かってお辞儀してた。 
「何言ったの?」と聞いても、 
「帰れよ、って言っただけだよ」としか言わなかった。 
あれだけ傍若無人の振る舞いをしてた奴らが「帰れよ」の一言で、 
お辞儀までして立ち去るだろうか・・・? 
しばらくしてそいつはバイトを辞めたが、辞める時もきちんと挨拶に来てくれた。 
携帯を洗濯機でジャブジャブしなかったら、連絡取れたのに・・・と今少し後悔してる。 
何一つおかしい事は無い、普通の、それでいて謎の人物だった。 
ただ、あの「50年前は・・・」という言葉の意味が、今でも分からない。 
※可愛い事画=可愛い子とか