[小さいおっさん]

友達が1人暮らしを始めたという事で、彼女の家に遊びに行きました。
彼女が住んでいるマンションは親が金を持っている事もあって、
芸能人とかが住んでそうな(実際住んでいるらしい)立派なマンションです。
彼女の部屋に入り、最初は他愛もない話をしていました。
話が途切れて少し間ができたとき、彼女が口を開き
「あのね、うち小さいおじさんがいるの」
と言い出しました。
何を言い出すんだと思い、私はハァ?と顔を顰めると、彼女は至って真面目な表情。
「本当だよ! クローゼットの中にいるんだって!!」
彼女は私の腕を引っ張り、そのクローゼットの前まで連れていきました。
どう見てもなんのへんてつもないマンション備え付けのクローゼットです。
「本当にいんの?」
「本当だって」
彼女はそう言ってクローゼットを開けました。
クローゼットの中には洋服と段ボールがあるだけ。何もいません。


wktkして損したよー。と思い
「なんもいないじゃん」
と友達を見ると、友達は一点を見つめています。
「いるよ!! 小さいおじさん!」
「はぁぁぁ??」
私も流石に呆れてきて、もういいよ。と言ってリビングに戻ろうとしました。
「待ってって!!」
彼女はそう言って私の腕を掴みました。
なんだよ。と思い振り返えりました。
「え? は?」
私の目に飛び込んできたのは、親指程度の本当に小さなおじさんでした。
こんなに小さいと遠目からじゃ判別がつかない筈なのに、確かにおじさんなんです。
「い、いるっ…おじ、おじおじ!おじさんっ!!!」
思わずどもってしまいましたが、いるのです。おじさんが。
小奇麗なおじさんが段ボールの上に立っているのです。
大パニックの私に彼女は自信満々。
彼女の話ではこの小さなおじさんはこの家に福を招いてくれるありがたいおじさんだそうで。
霊感というものが全くない私が見えてしまったのは、霊感のある彼女が私の手を掴んだとき
体を伝って電流が通るしくみみたいなので見えてしまったのだろうとの事でした。
座敷わらしの一種なのだろうけど、何故におじさんなのでしょうか…。
持って帰りたいと言ったら案の定、彼女に笑顔で却下されました。


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