[灰になる前に]
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ようやく斎場に着いた。
とても大きな斎場で、その日も何組もの葬儀が執り行われていた。
だから沢山の部屋の中から探して、祖母の所に即座に行くには、難しかったはずだった。

でも不思議なことが起きた。
タクシーから慌てて降りて、斎場のエントラスンスに走って向かおうとしたら、
私が足を踏み入れるまえに、自動ドアが勝手に開いて、中から従業員の方が出てきて、こう言った。

「○○様(私の名前) お待ちしておりました。こちらです」

そして私を案内して、祖母のところまで連れて行ってくれた。

扉を開けると、ちょうど出棺前の献花が終了する所だった。
私がほんとに最後の弔問客。
ぎりぎりで間に合った。
祖母に最後に一目会うことが出来たのだ。

私が最後の最後で現れたこと、しかも迷わずに来れたことを、家族はとても驚いていた。
それぐらいその斎場には、沢山の会場があったから。
私は会場にいる親には、着いたこと事など連絡してなかったから、
なぜあの時即座に従業員の方が対応してくれたことか、不思議でしようがなかった。
あの時、従業員の方に案内してもらわず自分で探していたら、電車が一本遅れていたら、
タクシーが即座に捕まらなかったら、確実に間に合わなかった。
いろいろな奇跡が連続した結果だった。

もしかしたら、祖母が灰になってしまう前に、私に会いたいと思ってくれたのかなと思っています。
祖母:孫が着いたから迎えに行け>従業員の方:電波受信
みたいな感じで。

ありがとう。
大好きだよ。おばあちゃん。
もっといっしょにいたかったよ・・・。


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